多様性を象徴する絵文字、米博物館に収蔵 ヒジャブ姿、異人種カップル

Emojination / Cooper Hewitt via AP

 とても小さなイラストである絵文字のなかから、ユーザーに対して広く多様性を示してきた2種類がクーパー・ヒューイット・スミスソニアン・デザインミュージアムに収蔵された。デジタル所蔵品に絵文字を追加した3館目の博物館となる。

 ニューヨークにあるこの博物館は、急増しつつあるデジタルアセットの所蔵品へ「ヒジャブ(ヘッドスカーフ)を巻いた人」と「肌色の異なるカップル」を表す絵文字を追加した。同博物館の現代デザイン部門でアソシエイト・キュレーターを務めるアンドレア・リップス氏によると、この2種類の絵文字がもつ重要性について対談や映像を用いた展示が予定されているものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴い具体的な日程は未定だという。

 リップス氏はAP通信のインタビューのなかで、「さまざまなグループやコミュニティ、カップルをも含めた絵文字がキーボードに並ぶことへの強い願いから、ぜひ、この絵文字をコレクションに加えたいと考えました」と述べている。

 ヒジャブ姿の絵文字が2016年に非営利団体「ユニコード・コンソーシアム」に提案されたことは、非公式には知られている。世界有数のデジタル企業から投票メンバーが参加するこの団体で、絵文字コード規格の管理が行われている。

 ヒジャブ姿の絵文字は、2017年に携帯電話とコンピューターに登場した。サウジアラビア出身の少女ラユーフ・アルフメディさん(当時15歳)が、この絵文字を新たに加えるための活動を行ったことで世界的な注目を集めた。アルフメディさんは、タイム誌が選んだ2017年の「最も影響力のある10代」の1人である。

 ヒジャブを身につけている女性は、アルフメディさんを含め全世界でおよそ5億5千万人いる。それにもかかわらず、ヒジャブ姿の女性を表す絵文字はなかった。肌の色についてもまた同様である。擁護団体は、カップル2人の肌色の組み合わせ以外にも、複数の人種からなる家族を表す絵文字をキーボードに加えるよう訴え続けている。

 人種の異なるカップルを表す絵文字は、2019年にキーボードに登場した。これによりユーザーは初めて、ひとつの絵文字のなかでさまざまな肌色を組み合わせることができるようになった。この背景には、カトリーナ・パロット氏による推進活動がある。黒人女性でありヒューストンを拠点とする起業家の同氏は、キーボードに自分を適切に表現できる絵文字がないと落胆する娘を見て、多様な肌色の絵文字を作ることを決めた。

 2015年、パロット氏はサードパーティのアプリ開発者として初めて、多様な人種を表す絵文字を自身のアプリ「アイ・ダイバーシコンズ(iDiversicons)」に公開した。ユニコード・コンソーシアムの投票権をもたない会員であった同氏は、あらゆるデバイスにおいても導入を進めるよう訴えた。人種の異なるカップルを絵文字に追加するための活動はその後、2019年にウェビー賞を受賞した「ティンダー」などのマッチングアプリによって先導されることになる。パロット氏はカップルを表す絵文字の開発に関わることはなかったが、さらなる多様性に向けて影響をもたらしたことで知られている。

 同氏は先駆けとなった自身のアプリについて、「アフリカ系アメリカ人のためのアプリで終わらせたくはないと私たちは考えました。世界を代表して行動したかったのです。絵文字には欠けているものがあるとみんな感じていましたので。アフリカ系アメリカ人、アジア人、白人、インド系やラテン系、ヒスパニック系の人々など、あらゆる肌色について取り組みました」と述べている。

 現在スタンフォード大学の2年生であり、19歳のアルフメディさんがこの活動に関わろうと決めたのは、友人グループでのチャットを行うアプリ「ワッツアップ」に端を発する。友人らがプロフィール写真を絵文字に変更した際、アルフメディさんは自分を描写する絵文字がないことに気がついた。その後偶然にも、写真共有アプリ「スナップチャット」のストーリーで、ユニコード・コンソーシアムへ新しい絵文字を提案する方法を見つけた。同協会はアップルやツイッター、フェイスブックなどの大企業向けにリリースする絵文字を取り決めている。

 その後、ソーシャルニュースサイト『レディット』の共同創設者アレクシス・オハニアン氏が設立した質問コーナー「Ask Me Anything(何でも聞いて)」が、アルフメディさんが関わる絵文字についての活動を広めるのに役立ち、それをきっかけにメディアからの注目を得ることになった。一方で、支援団体「エモジネーション」のジェニファー8・リー氏からの支持も得た。

 アルフメディさんはAP通信に対し、「たとえ些細なことだとしても、表現手段はとても大切であるということを話しました。ヒジャブそのものについて、また今日のデジタル時代にヒジャブが意味することについて対話を行うきっかけになれば、と考えています。ヒジャブを身につけている人と意見を交わしたり、ヒジャブがもつ意味について熟考したりすることなく、大仰な意見をもつ人々は多くいますので」と話す。

 ヒジャブや人種の異なるカップルを表した絵文字は、アフェランドラ・メッサー氏がデザインしたものだ。同氏は、より多様な人々に開かれた代表的な絵文字を提唱する市民団体のエモジネーションで当時活動していた。

 エモジネーションの共同創設者であるリー氏は、「世界中の何十億ものキーボードに影響をもたらし、小さな画面上で自分をどう見せるか、人々の考えを変えてきました。この歴史的な功績が国内でも最も優れた博物館に収蔵されていることは、いまそれを支持する人々にとっても、将来の学者にとっても、素晴らしいことです」と語る。同氏が製作を務める新作ドキュメンタリー映画「The Emoji Story(ザ・エモジストーリー)」は12月18日に公開された。

 クーパー・ヒューイット博物館の発表は、NTTドコモが作った最初の絵文字を2016年に収蔵したニューヨーク近代美術館(MoMA)に続くものだ。日本における携帯電話通信サービスのトップシェアを誇るドコモは、絵文字の生みの親ともいえる。2018年には、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館に、蚊をモチーフにした絵文字が収蔵された。このように、デジタル世界の歴史や文化における貴重な一端を保存するため、博物館や文化施設はよりいっそうの力を注いでいる。

By LEANNE ITALIE Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP

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