映画『アリータ:バトル・エンジェル』レビュー 大きな瞳と大掛かりな特殊効果

Twentieth Century Fox via AP

 アリータは、普通の10代の女の子となんら変わらない。チョコレートが大好きで、門限も破るし、革ジャンを着てバイクにまたがったサラサラヘアの不良少年に夢中。だが、他の面でアリータは普通じゃない。たとえば、彼女はものすごい刀剣でこぼれ落ちる一粒の涙を真っ二つにできるのだ。

 これが、スリリングな漫画の世界への入り口――木城ゆきとのSF漫画『銃夢』をジェームズ・キャメロン(脚本/製作)とロバート・ロドリゲス(監督/脚本)が映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』で描かれる二面性だ。プロットの詰め込み過ぎで消化不良を起こしかねないが、どうにか魅力的な映像であり続け、(大ヒットとまではいかなくても)SF映画の大作が誕生した。

 本作は、実写とCGをミックスして製作された。機械でもあり人間でもあるアリータのなかに存在するやさしさと凶暴性の両面を、ローサ・サラザールがモーション・キャプチャーで表現する。CGの彼女は大きな目をしているが、すぐにそんなことは気にならなくなる。自身の姿がスクリーンに映し出されなくても、サラザールは深い感動を伝える。また、ミステリアスで冷淡かつ危険な敵役で、ジェニファー・コネリーとマハーシャラ・アリが出演している。

                                                                                                                 

 映画の冒頭、心やさしいサイバー医師のイド(クリストフ・ヴァルツ)がクズ鉄の山の中からアリータの頭部を発見する。時は2563年、舞台は世界を天空と地上に二分した大戦の生き残りがひしめく混沌としたクズ鉄の町、アイアンシティ。ここではサイボーグは珍しくなく、その部品は新しいほど高く売れる。奇妙なのは、ビニール傘がまだ使われている点だ。都市が空中に浮いているのに、住民は依然として安いビニール傘に頼っている。

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 新しい体を得たアリータは目覚めるが、過去の記憶がない。自分が何者か、自分の宿命は何なのか突き止めなければ。「誰のルールに従うの?」と問うアリータ。それと並行して、人間型サイボーグを襲って金儲けをするヒューゴ(さわやかでマッチョなキーン・ジョンソン)と恋に落ちる。日中はサイボーグの彼女とロマンチックなときを過ごしながら、夜になると別のサイボーグを切り刻むのだから、倫理的に問題がある彼氏だ。

 サイバーパンクな賞金稼ぎ、天空の都市ザレムに住む支配層のエリート、そして、アイアンシティの住民が熱狂するスポーツで、ヤク中のローラーダービーと『デス・レース』を足して二で割ったようなモーターボールなどのサブプロットが挿入される。本作はPG-13指定だが、何度も目玉をえぐり出したり、サイボーグを切り刻んだりするサイバーホラーな描写が頻出する。これが人間だったら、間違いなくR指定だろう。

 製作陣は、最終兵器である我らがヒロインを、あきれるほどにうぶな子どもとして描くことも厭わない。彼女は自分の胸に手を突っ込むと鼓動する人工心臓を彼氏に差し出し、後にその行為を「激しかった」と笑って認める。酒場を埋め尽くす、屈強な殺し屋一味を圧倒するパワーを持つアリータだが、家ではソファで丸くなって養父イドの胸に顔をうずめる。オリンピックの体操選手も顔負けの宙返りを決める彼女にイドは、モーターボールで戦うときは膝当てとヘルメットを着けるように言う。相手は巨大なレーザーの回転ノコギリやナイフを持っているというのに。

 確固たる倫理基準を持つアリータは、「私は悪に屈しない」と宣言する。そうでなくっちゃ、彼女の一流武芸のような暴力シーンが観られない。かわいい犬が理不尽に惨殺され(スクリーンには映らないのでご安心を)、復讐を誓った彼女は犬の血を自分の顔に塗り、怒りに目を細め、殺意に満ちた表情でバネのように犯人探しに飛び出す。犯人が誰であれ、5分もしないうちにお陀仏になることは火を見るよりも明らかだ。

 結局、ユーモア不足で暴力過多な『アリータ:バトル・エンジェル』は、盛り上がりに欠けるまま結末を迎える。続編については未発表だが、天空の都市での次のバトルを見据えるようにアリータが天を仰いでいるので、きっとまたスクリーンで彼女に会えるだろう。『バンブルビー』のチャーリー(ヘイリー・スタインフェルド)のように、超厄介な機械だって扱えるワケありの若い女性が主役の映画が歓迎される時流に乗って登場したのが、アリータ(ローサ・サラザール)だ。ガールズパワーが映画界を席巻する。

 20世紀フォックス配給の『アリータ:バトル・エンジェル』は、PG-13指定。上映時間は2時間2分。2月22日(金)より公開。

By MARK KENNEDY, AP Entertainment Writer
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP