勝てば官軍? 大坂なおみ選手に対する日本の受け止め方、米メディアの見方

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 大坂なおみ選手の全米オープン優勝をきっかけに、日本では彼女のアイデンティティを巡る論争が勃発した。在住国のアメリカ、そして父親の出身地であるハイチにおいてはどのように語られているのだろうか。

◆「アメリカをホームと呼んでいる」
 ワシントン・ポスト紙は、準決勝の前に出した記事において、大坂選手が日本のテニス協会を選んだことを「財政的理由」とし、こう言及している。「この財政的な決断は、彼女の多文化的アイデンティティとは別物である。彼女は3つのカルチャーを持ち、日本とアメリカの2つの国籍を持ち、アメリカをホームと呼んでいる」。また2ヶ国語で行われる記者会見において、「彼女は日本語を聞き取り、理解をするが、英語で回答する。英語では、より豊かで微妙な表現ができる」と伝える。

 そして、3ヶ国についての彼女の発言を掲載している。「日本の文化? 私はそのすべてを愛しています。アメリカは、私が住んでいるところ。フロリダでトレーニングしています。そしてハイチですが、もしあなたが今までハイチ人に会ったことがあれば、彼らが本当にポジティブであることを知っていると思います。あなた方が友人なら、彼らはあなたのために何でもするでしょう。それは本当によい性質ですし、私の祖父母や父方の家族がそうであることを本当にうれしく思います」

◆「日本人の定義が曖昧になってきている」
 ニューヨーク・タイムズ紙は、東京とアメリカで育ったモトコ・リッチ東京支局長の記事を掲載。インタビューに答えた日本人のある親子は、「彼女の顔は日本人にみえる」、謙虚で喜びを爆発させない「彼女の魂は日本人だ」と話す。このように日本人を広い意味でとらえる世代が現れてきているものの、日本の保守的な性質が、純血主義に固執していると伝えている。

 14年間日本で暮らした経験を持つ、同紙のアフリカ系アメリカ人のコラムニスト、ベイイ・マクニール氏は、「この国は同質でいることに誇りを持っている。しかし、彼女にスポットライトをあてることで、自分たちが同質ではないと知っていると世界にメッセージを送っていることになる」と指摘する。

 実際、昔ながらの日本人の概念が変わりつつあるという兆候が見られたとリッチ氏は綴る。「日本人の定義が曖昧になってきていると思う。日本の社会はもっと寛容になりつつある」という意見も紹介された。

Text by 鳴海汐