織田信長に仕えた黒人侍「弥助」が世界で脚光 ハリウッド映画化も

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 今夏、仏ルモンド紙など欧州メディアが相次いで「黒人のサムライ」を記事に取り上げた。彼の名は「弥助」という。イエズス会のアレッサンドロ・ヴァリニャーノが来日して織田信長に謁見した際、奴隷として連れていたアフリカ出身の人物で、信長に気に入られ武士になった。昨年、弥助の伝記実写映画がハリウッドで企画されたことで、改めて世界各地で注目を集めているのだ。

◆日本のアニメやゲームからじわじわ人気に
 海外での弥助ブームは、彼を描いた日本の漫画などを通して数年前から始まっていた。例えば、2007年に漫画『アフロサムライ』(岡崎能士著)がアニメ化されると、アメリカでは先行放送。声優を務めたサミュエル・L・ジャクソン主演で実写映画化も持ち上がっている。徳川家康に仕えた三浦按針ことウィリアム・アダムスが主人公のゲーム『仁王』(2017年)でも、「ヤスケ」が欧米での認知度を押し上げた。

 欧州の場合、南蛮貿易や遣欧使節などの歴史から信長を知る人も多く、地理的にアフリカ人に注目が集まりやすい。フランスでは2013年に出版された小説『Oda Nobunaga』(シャルル=ピエール・スラン著)からも弥助が知られていたようだ。そんななか、弥助を描く映画『ブラック・サムライ(仮)』の制作が発表された。黒人のアクションヒーローと「サムライ」という異質な文化の取り合わせが受け、彼の素顔に迫ろうとの動きが広まったのである。

 アフリカ関係の話題を扱うメディア『Face2Face Africa』は、現時点でわかっている弥助の実像を伝えている。ルイス・フロイスがイエズス会年報に残した「十人力の剛腕」、「信長に私宅と腰刀を与えられた」(『信長公記』)など、史料にもとづいて弥助を紹介した。初めて対面したときの信長が、驚きのあまり肌に墨を塗っていると思い込み、体を洗わせた話など、日本でよく知られる逸話もまとめており、弥助の伝記に関心が集まっていることがわかる。

Text by 伊藤 春奈