年配女性はファッションに何を求めるのか? 業界も知らないその答え
◆その成果
私たちは数々の実践的なワークショップを実施し、また同時に、質問形式をある程度統一したインタビューを何度も行った。その中で参加者たちは、ファッショナブルなアイテムへの期待や、各自が好むアイテムについての様々な意見を表明した。その過程であらためて再認識されたのは、「愛される服は飽きられない」という事実だった。
参加者たちは、いったん作られた服のベースを各自の好みに沿ってカスタマイズする作業を通して、デザイナーの製作過程に積極的に関わった。過去の研究で指摘されたように、このようなプロセスは、デザイナーと潜在的なカスタマーとの間に特別な相互作用をもたらす。すなわち、デザイナーの製作プロセスへの貢献を通じて消費者自身が「価値の創造に参画できる」のだ。
生地選びの時点からカスタマーが参加し、製作途中の服に袖を通すことは、知的な波及効果がきわめて高いことが証明された。つまり、年配女性たちが持つ優れたセンスや知見が、ファッションという形を通して具現化されたのだ。またこのプロジェクトの成果は、研究グループとノッティンガム・トレント大学のジム・ボクスオール氏が共同制作した2つの短編映画に収められた。そのうちのひとつが「トライング・イット・オン」である。
この映画では、自分自身が製作過程に加わった服やアイテムに身を包み、一般公開のファッションショー「エモーショナル・フィット・ファッションサロン」にモデルとして参加した女性たちが描かれている。同イベントは、「ファッション・レボリューション」とのコラボレーションの下、ノッティンガム市内の多目的スペース「アンテナ」にて開催された。
そこに登場した、オーダーメイドのテキスタイルプリントとジオメトリック・シルエットを組み合わせたファッションの数々。それらはすべて、「サイズとフィット感」ではなく「スタイルとシェイプ」に軸足を置き、様々な体型のカスタマーに対応できるようデザインされたものだ。
また、プロジェクトに参加した女性たちは、公正な取引を経て調達されたハイクオリティーな素材を求めていた。そのため私たちは、シルク、ビスコース、ウール、アイリッシュリネンなどの複数の異なる素材を使って作品をコーディネートした。また、個々のアイテムの細部にいたるまで、生地の幅のすべてを使用するゼロエミッション製法を採用した。この手法は、「ファッション・レボリューション」のディレクターの一人であるオルソラ・デ・カストロ氏が言う「新たな創造性とソリューションベースのムーブメント」と重なるものだ。
ファッションショーの最後に、グループコーディネーターのヘレン・ブレイディスコット氏はココ・シャネル氏の以下の言葉を引き合いに出した。この言葉には、自ら製作過程に関わる中で女性たちが実感した感情が凝縮されている。
「人は30歳でゴージャス、40歳でチャーミング。そしてその後はずっとイレジスティブル(抗えないほど魅力的)になれるの」
もちろん昔と比べれば業界も進歩している。それは事実だ。しかしまだ十分ではない。ファッション業界は、年配のカスタマーたちと今以上に強くタイアップしていく必要がある。それによって飽きずに長く支持される優れたデザインを生み出し、人々が末永く魅力的に装い続けられるようにできるはずだ。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac