年配女性はファッションに何を求めるのか? 業界も知らないその答え

Sterling Munksgard / Shutterstock.com

◆自己表現
 この世代の多くの人々にとっては、ファッショナブルな服を身に着けたり、自分自身でそれを作ったりする行為は、自己表現のひとつの形だと言える。退職年齢を迎えつつある現在の彼らにとって、それは今も変わらず重要な要素だ。この世代の多くの女性を魅了するファッションカリスマのツイッギーは、2016年にファッション界での在籍50周年を祝った。現在 68歳にして、ツイッギーはマークス&スペンサーのファッションモデルを現役で務めている。

 また、ジョン・ルイスの「Kin」やコスに代表されるその他の量販ブランドも、洗練されたマーケティング手法に基づいた充実したラインナップを現在提供している。だが、それにもかかわらず、ファッション業界は年配の消費者との接点を今よりさらに深めなければならない。それが私たちの研究が強く示唆するところだ。

 2015年に始まった「エモーショナル・フィット」。現在も進行中のこのプロジェクトは、年配女性のグループが主導するカスタマー志向のリサーチプロジェクトだ。プロジェクトメンバーの女性たちは、ノッティンガム・トレント大学のアートデザイン学部に対し、デザイン分野の高等教育において年配女性向けのファッションに関するどういった教育が行われているかを強く問いかけた。話題としてはあちこちで耳にするものの、世間一般のファッション市場ではその成果がほとんど見えないのは何故なのか?

 その後、このグループと同大学の研究者らが共同し、ファッションに関するクリエイティブな研究プロジェクトを立ち上げた。プロジェクトの参加メンバーは、全員が55歳以上。ファッション研究者、テキスタイルデザインやクリエイティブ・パターンカットの専門家、そしてノッティンガム地域の40名以上の女性も加わったこのユニークな共同プロジェクトは、高齢者層のスタイルや嗜好を採り入れた新たなファッションの形を追求する参加型アプローチとして現在も成長中だ。

 私たちの研究における重要な発見の1つは、年配女性たちが若者志向の「ファストファッション」が席巻する世界の中で不当にも見過ごされ、彼らの持っている服作りや着こなしに関する深い知識も、デザイナーとリテーラーの双方から無視され、過小評価されていると感じているという事実だった。

 このような結果を受けて、カスリン・タウンゼンド博士が主導し、アニア・サドコウスカ博士、ジュリアーナ・シッソンズ氏、カレン・ハリガン氏、カスリン・ウェスト研究助手らを擁するプロジェクトチームは、ファッション界の新たなプロトタイプとなりうるコレクションの研究開発に力を注いだ。

Text by The Conversation