「ジワジワ系フェミニズム」で始まる?日本の男女平等

 「フェミニスト」という言葉にあなたはどんなイメージを持っているだろうか?エマ・ワトソンを始めとするハリウッドセレブや有名ブロガー。彼らがフェミニストとしてSNSで自らの主張を発信するようになった昨今、世界ではフェミニズムをより身近に感じる人が多くなっている。特に欧米の先進国では、男女共にフェミニスト的思考を持つことは「もはや、当然の一般教養」となりつつある。そんな中、我が国日本では男女共に平等を望む意識が極めて低いことが様々なレポートから明らかになった。「一体なぜ?」そこには日本独自の男女平等実現法「ジワジワ系フェミニズム」の姿があるようだ。

◆平等になりたい意識が低い国、日本
 Ipsosが2014年に先進国15ヶ国で実施した男女格差に関する調査で、日本における男女平等の意識は極めて低いことがわかった。日本では、「女性と男性が平等な機会を与えられるべきだ」と考える人が71%と先進国の中で最も低く(平均87%、アメリカ90%、イギリス94%、フランス90%)、男性のフェミニストの割合も3%と世界最低だ(平均14%、アメリカ16%、イギリス14%、フランス19%)。

 さらに「男性の方が仕事をしたり、お金を稼いだり、教育を受けることに適している」と感じている日本人は30%に上り(平均20%、アメリカ22%、イギリス15%、フランス14%)、「女性は家庭の外へ出ていくことを志すべきではなく、子供を産んだり家族の世話をすべきだ」と感じる人は16%もいるようだ(平均14%、アメリカ15%、イギリス10%、フランス10%)。

◆フェミニストは恥ずかしい。「出る杭が打たれてしまう」社会
 このように、男女平等の機会を求める人が少なく、男女格差を受け入れる傾向がある日本。その原因は「意見を主張することへの恐れ」や「群衆から目立つことへの恥」」があるようだ。ファッションカルチャー誌『i-D magazine』が2015年に日本人女性に行ったインタビューで、多くの女性は「自分をフェミニストだとは思わない。フェミニズムの考え方は役に立たない。」と答えている。女性たちは、自らが男性にはない能力があることを認める一方で、それを声高らかに主張することは重要ではなく恥ずかしいことでもあると感じているのだ。

 確かに、個人が声をあげ権利を主張することで急進的な変革を求める欧米的フェミニズムを「出る杭が打たれてしまう日本社会」で実現するのはあまりにハードルが高い。そこで、今密かに日本で始まりつつあるのが「ジワジワ系フェミニズム」なのだ。

◆ジワジワ変える。少しづつ、みんなで変える。
 「フェミニズム後進国」と思われている日本でも、女性の性の解放や権利の主張は実は思わぬところで始まっている。例えば、BLや女性向けポルノ。まだまだニッチではあるものの、女性が持つ性欲の存在を認めそのニーズを満たすことで現在成長を見せている。さらには、『逃げ恥』や『東京タラレバ娘』などに代表されるテレビドラマや漫画でも、家事労働に対する搾取や女性のキャリアにおける実情がコミカルに描かれている。

 このように、一見すると政治的には見えないニッチカルチャーやポップカルチャーから、急進的な少数リーダーを持たずに国民の意識をジワジワと変えていくのが日本的なフェミニズムの方法、「ジワジワ系フェミニズム」なのかもしれない。

 個人が権利を主張する欧米式の直球型フェミニズムとは異なる形であるがゆえに、日本はフェミニズム後進国だと報道されがちだ。しかし、それは単にスタイルの違い。実は日本でも表面的にはわかりづらい形でジワジワと皆が協調性を持って変革を創り出しているのだ。いったい今後、この「ジワジワ系フェミニズム」が日本でどのような男女平等をもたらしてくれるのか、注目だ。

photo via PEXELS

Text by 高橋由佳