「これも“かわいい”なの!?」 ぐでたまで日本のかわいい文化の深淵を知る海外

 海外では日本の「かわいい文化」が依然として注目を集めている。「ハローキティ」のグッズを身につけて街を歩く女子は、もはや日本だけでなく世界中で見られる風景となっている。この現象を社会学・人類学的な観点から分析する研究者まで存在するほどだ。

 最近、海外ニュースメディアでは、かわいい文化における新現象とされているキモかわ、あるいはゆるかわのキャラクターが関心を集めている。とりわけサンリオのキャラクター、「ぐでたま」と「かわいい」という概念の変化の関係に焦点が当てられているようだ。一体なぜ人生に疲れているこの卵が愛されているのだろうか?

◆かわいい文化が日本経済を支えている?
 70年代にはじまったといわれているかわいい文化は、従来丸くて可愛らしいキャラクターから成り立っていた。キティちゃんやその友だちはもちろん、くまもんをはじめ、ゆるキャラの人気が日本においてかわいい文化がどれだけ広まっているかを如実に語っている。

 ガーディアン紙で指摘されているように、かわいい文化は依然として日本経済においても大きな役割を果している。つまり、かわいさを通じて消費者の興味を惹くことができている。人間は本来、小さくてか弱い、険悪ではない物に対して自然と「かわいい」と感じる性質がある。消費者にとって手頃な値段ではない物でもかわいい雰囲気を漂わせていればより手に取りやすくなるというのだ。とはいえ、市場が飽和状態になっているなかでかわいさを通じて消費者の関心を呼び起こすのは容易なことではない。そのため、「キモかわ」や「ゆるかわ」という新たな概念が作られたのだ。

 では、次々登場している新しいキャラクターのなかでなぜぐでたまが海外で注目を集めているのだろうか?

◆「人生ニガい」ぐでたまの声に思わず共感
 Web誌『クオーツ』は、ぐでたまが動物ではなく単なる卵である点が独特で、海外において関心を集めている理由だと指摘する。また、ハローキティをはじめ、従来かわいい文化を象徴してきたキャラクターと違って、ポジティブな側面だけを持っているわけではないアンチヒーローであることも人気の理由の一つだとしている。

 Web誌『Vox』は、人々がぐでたまに惹かれる理由はその見た目だけではなく、キャラクターの個性にあると述べる。つまり、現在不穏な社会変動に生きている人々は、「人生ニガい…」と悩んでいるぐでたまに対して共感を覚えるのだ。疲れているぐでたま、眠たいぐでたま、何もしたくないぐでたまの気持ちは、万国共通、誰でも理解して共有できる気持ちだといえよう。

◆ぐでたまが作った新たな「かわいい文化」
 ぐでたま現象がアメリカと日本のそれぞれのかわいい文化の相違点について考えさせるきっかけを作った、とVox誌は指摘する。アメリカをはじめ、欧米ではかわいいの概念が非常に単純だ。キャラクターの描き方からも理解できるように、善玉と悪玉がデザインによってはっきりと分けられており、かわいいキャラクターは善良さや優しさだけを象徴しているのだ。

 一方、日本では善玉と悪玉の間のグレーゾーンが存在する。キモかわやゆるかわの概念は、日本におけるかわいい文化が白黒ではなく非常に複雑であること、また常に変化していることを如実に語っているのだ。

◆見た目を超越した「かわいい」の概念
 LINEスタンプや動画など、ぐでたまが日常生活のあらゆるところに姿を現している。それらを友だちに共有する行為が、人生に疲れているぐでたまへの共感を表し、自分も人生に対して同じ気持ちを抱いていることを表現することになっている。ぐでたまがかわいさの概念だけではなく、かわいさに対する人々の反応をも変えたといえるのではないだろうか。

「かわいい」とは、もはや見た目を超越した概念となっている。ぐでたまをはじめ、新しいかわいい文化のキャラクターたちは我々の心を癒し、恐怖や挫折を乗り越える力を与えてくれるのだ。

Text by グアリーニ・レティツィア