驚くべき日本の自動販売機 多い、何でも売ってる、ハイテク…海外でも強い関心

 日本の自動販売機は、日本を訪れる外国人観光客のなかで今でも興味深い存在のようだ。街中にある自販機では飲み物はもちろん、マスクや卵なども購入できることが旅行者のブログだけではなく、海外ニュースのウェブサイトでも紹介され関心を集めている。日本に長く住んでいる人にとって自動販売機は日常風景の一部に過ぎないが、旅行者から見ると日本文化を語る独特な存在なのだ。

◆23人当たりに1台の自販機
 はじめて来日する旅行者は、まず自動販売機の数に驚くだろう。最近の調査によると、日本では23人当たりに1台の自販機が設置されており、駅構内はもちろん、富士山の山頂にまで24時間動き続ける自販機がある。

 しかし、海外で注目を集めているのは、その数だけではなく、日本の自販機の多様さなのだ。旅行者の個人ブログはもちろん、英インデペンデント紙のようなメディアでも日本の自販機が話題となっており、飲み物だけではなく、卵、下着、缶詰パン、犬用のかつらまで購入できることが面白おかしく紹介されている。

◆自販機の未来
 自動販売機の未来も注目を集めている。CNNで指摘されているように、飽和状態になっている市場において自販機がコンビニとの競争に直面し、新しい消費者を獲得する必要がある。

 自販機の利用率は、30代~50代男性がもっとも高いとされているなか、飲料メーカーは、まだ潜在需要がある若年層や高齢者層に目を向けている。ダイドードリンコの髙松富也社長は、今後は若年、学生、外国人旅行者の消費者層にもターゲットを広げたいと述べている(CNN)。同社は、これまで「しゃべる自販機」やジュースを買うとルーレットが始まる「当たり付き自販機」などを導入してきた。今度の挑戦は、スマホを通じて自動販売機の利用をより楽しい体験にすることだ。そのため、飲み物を購入するとLINEやスマホゲームなどで使えるポイントが貯まる仕組みを導入したのだ。

 また、未来の自動販売機には硬貨も必要なくなるだろう。QRコードとスマホアプリを利用するAcure自販機が3月に新宿駅に設置され、今年の春に首都圏で20台設置されるという(CNET)。

◆識者が語る自販機と日本文化との関係
 今まで日本における自動販売機の多さは、忙しいサラリーマンの需要で説明されていた。つまり、日本、とりわけ東京で働く人々が忙しい生活を送っているなかで自動販売機の便利さを評価しているとされていた。ビジネス・インサイダー誌の記事はそこに焦点を当て、「なぜ日本は世界一自動販売機が多いのか」という問いに対する社会学者や経済学者の様々な答えを紹介している。

 まずは、人件費と関わっていることが主張されている。少子高齢化が進むにつれて労働力の不足も深刻化している。経済学者のロバート・ペリー氏らは、自動販売機がその解決策として考えられると指摘している。また、とりわけ都会における高い人口密度によって地価が上昇傾向にあるため、新たな店舗を開くよりも自販機を設置することを選ぶ企業が少なくないと説かれている。

 また、自販機の多さが、日本社会において犯罪率が非常に低いこと、そして現金、その中で硬貨が大いに使われていること、この2つの特徴を説明しているとする。破壊行為が多いアメリカでは、街中に自販機を設置する企業はまずないだろう、とロバート・ペリー氏は指摘している。また、どこでもクレジットカードで買い物を済ませることに慣れているアメリカ人にとっては、硬貨が必要な自販機が便利とはいえないだろう。

 最後に「なぜ日本は世界一自動販売機が多いのか」という問いに答えるために、同記事の筆者が鷲巣力氏の『自動販売機の文化史』を引用しながら、日本人とロボットとの関係に言及している。つまり、日本人はロボットに対して関心をもっているだけではなく、信用を抱いているのだ。このようなオートメーションに対する強い関心が自販機の普及と関係している、と鷲巣氏が述べている。

◆「自販機の未来」で「日本の未来」を見る
 日本人、あるいは長く日本に住んでいる人にとって、自動販売機は日常生活に欠かせない、当たり前の存在である。そんな当たり前の存在に対して、外国人旅行者は新たな視点をもたらし、日本文化を見つめ直すきっかけを与えてくれる。

 日本文化と密接な関係をもっている自販機がどのように変化していくか、今後も海外で注目を集め続けるだろう。「日本の未来」を論じる際に「自販機の未来」も新たな観点になるかもしれない。

Text by グアリーニ・レティツィア