福島第一原発漏水 各紙が共通して指摘する課題とは

 東京電力福島第一原子力発電所の「地下貯水槽」から汚染水が漏れている。貯水槽7ヶ所のうち、2ヶ所で漏水が判明。5日夜に発覚した後、別の貯水槽への移送作業が進められているものの、移送先でも汚染水漏れの可能性が発覚し、東電は移送作業を停止している(9日13時半現在)。
 「地下貯水槽」は、ポリエチレンなど3層のシートで汚染水を管理する。安全性の高い鋼鉄製タンクに移すべきとの要望もあるが、物理的な容量不足のため現実的でないという。地下水の流入などで汚染水は毎日400トンのペースで増えている。 
 こうした厳しい状況をどう打開すべきか、日本各紙(朝日・毎日・産経)はそれぞれの視点から論じている。

【各紙の総評】
 各紙共通しているのは、昨今のトラブルを踏まえると、汚染水処理をはじめ、原発廃炉工程を東電だけで進めるのは不可能という論調だ。そもそも、朝日新聞が指摘するように、核燃料が取り出せない以上、抜本的な解決策はとれない。さらに、原子炉を冷却した水の使い回しができなかったため、汚染水は増える一方だ。なお産経・毎日両紙は、敷地外・海への拡散が懸念される事態ではないと報じている。

【各紙の提言】
 まず朝日新聞は、他の貯水槽活用・地上タンク増設という東電の当面の対策に対し、水漏れや場所不足などの課題を指摘。より政府・原子力規制委が関与し、様々な分野から知恵や人材を集めるよう求めた。
 毎日新聞も、「場当たり的対応」は限界に近いと指摘し、国と東電は、廃炉計画を抜本的に見直すよう求めている。また今回のトラブルでは、規制委の監視にも問題があったと批判。貯水槽建設計画の事実上の追認、スタッフ不足などを指摘し、“実践能力の高い”スタッフ拡充を主張している。
 一方産経新聞は、政府の積極的関与を求めつつ、トラブルの背景には「現場の疲弊」がある主張する点が特徴的だ。40年とも言われる廃炉工程を推進するためにも、「オール・ジャパン体制」で現場の負担を軽減すべきと主張している。

 原発に対する姿勢の異なる各紙だが、原発処理問題において、東電の限界を指摘し、国や規制委の関与強化を共通して求めている。

Text by NewSphere 編集部