「武器輸出三原則」緩和の流れ 日本各紙はどう評価したか?

 航空自衛隊に導入される最新鋭ステルス戦闘機F35に関し、国内で製造した部品の輸出を認める官房長官談話が発表された。武器輸出を原則禁ずる「武器輸出三原則」の例外とするという。F35は、武力行使をする可能性のあるイスラエルで使われる可能性があるため、三原則に違反するのではないかと懸念されている。
 日本各紙(朝日・読売・産経)は今回の政府の決定について賛否を明確にしている。

 朝日新聞は明確に反対姿勢だ。まず、安倍首相がイスラエルの武力行使の可能性を認めていることを指摘した。そのうえで、これまで政府が掲げていた「国際紛争を助長するのを避ける」方針が、今回の談話では言及されていないことに注目。かわって談話に盛り込まれた「国連憲章順守」が、武器輸出可否の判断基準になることを指摘し、これでは三原則は「骨抜き」だと非難した。武器購入時に憲章違反の武力行使を明言するような国はありえないからだ。
 三原則は、2011年に野田内閣が大幅に緩和していた(日本の安全保障に資する武器を、安全保障面で協力関係にある国と共同開発する場合、輸出を認める)。今回の決定も三原則緩和の動きであり、このままでは日本製部品が闇に流れ紛争助長につながりかねないと同紙は懸念している。輸出拡大より「歯止めのかけ方」を議論すべき、と主張した。
 
 一方、読売・産経両紙は明確に評価する姿勢だ。両紙は主に、日米同盟強化の観点と、日本の防衛生産・技術基盤の維持・強化という観点から、決定を歓迎する姿勢だ。読売新聞は、「国際紛争」という曖昧な概念で武器輸出を縛ってきたことを、これまでの問題点として挙げた。そのせいで、「国産武器の価格上昇→防衛予算圧迫→(防衛予算削減の中で)最新設備の導入遅れ→防衛産業はさらに疲弊」という悪循環が起きていたと指摘。これを機に、“日本の安全にとって何が重要なのか”という観点から、三原則のさらなる緩和を検討するよう政府に求めている。
 産経新聞も、「紛争助長回避」という曖昧な制限を批判し、“国民の生命・安全を守るために何が必要か”を基に、三原則を抜本的に見直すよう主張した。更に、F35導入に際し安倍首相が示唆した「敵基地攻撃能力保有」についても、“日本を守り抜く”ために検討するよう求めた。

Text by NewSphere 編集部