シリコンバレーの富豪が出資する「ユートピア都市」構想とは 8億ドルで土地購入

カリフォルニア州ソラノ郡のトラビス空軍基地とその周辺の航空写真|Dicklyon / Wikimedia Commons

 米カリフォルニア州サンフランシスコからほど近い場所に位置するソラノ郡で、ある会社が8億ドルかけて5万エーカー以上の農地を買い上げた。その背後にはシリコンバレーの大物たちの新都市構想があるようだ。にわかに話題を呼んでいる本プロジェクトの狙いとは。

◆情報開示なく行われてきた土地の買収
 ソラノ郡の新たな開発を仕掛けるのはカリフォルニア・フォーエバーという名前の会社。最高経営責任者(CEO)のヤン・スラメック(Jan Sramek)が、チェコ共和国の小さな村で育ち、イギリスで経済と数学を学んだのち、投資銀行での勤務と教育関連事業での起業を経て、2017年に立ち上げた。同社は、シリコンバレーで名の知れたベンチャーキャピタル(VC)であるアンドリーセン・ホロフィッツ、そのVCの共同創業者であるマーク・アンドリーセン、オンライン決済・決済代行プラットフォームのストライプの共同創業者であるパトリック&ジョン・コリソン兄弟、リンクトインの共同創業者で投資家としても活躍するリード・ホフマン、アメリカを代表するVCに一つであるセコイヤ・キャピタルのチェアマンでグーグルの前取締役のマイケル・モリッツ、フィランソロピー活動を行う企業エマソン・コレクティブの創業者で、スティーブ・ジョブズの未亡人であるローレン・パウエル・ジョブズほか、名だたるテック業界関係者らが出資する。

 ニューヨーク・タイムズの記事によると、カリフォルニア・フォーエバーの子会社であるフラネリー・アソシエイツは、2017年以降、徐々にソラノ郡の農地や空き地の買い上げを実施してきた。これまでに8億ドル(約1200億円)を投じて、5万エーカー(約200平方キロ)以上の土地を獲得し、現在、ソラノ郡の一番の地主となった。タイムズの記事が出た今年8月下旬まで、同社は、広報活動は行うことはなく、土地の買い上げを粛々と進めてきた。しかし、あまりにも大量の土地を短期間に入手したため、地元では噂が立ち始めていた。カリフォルニア・フォーエバーのウェブサイトによると、これまで自分たちの活動に関して何も発信してこなかったが、ようやく情報を開示し、対話を始められるとある。また「よくある質問」には、もっと早くから地域住民を巻き込んで活動しなかった理由として、無謀で短期的な土地の投機ラッシュを避けるために、土地の買収が完了するまで具体的な計画を開示しなかったとある。

Text by MAKI NAKATA