買い控えムードのホリデー商戦、備える小規模小売業者 実店舗の利用増に期待

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 小規模小売り事業者らは今年のホリデーシーズンに向け、早い時期から商品在庫を積み増し、インフレ疲れで買い控えムードが広がる消費者らのギフト商品購入意欲を何とか喚起しようと躍起になっている。

 過去2年に関しては、年末ホリデー商戦は比較的好調だった。この背景には、パンデミック下で実施された各種の景気刺激策に支えられ、消費者のオンラインショッピング支出が顕著に増加したことが挙げられる。全米小売業協会によると、例年11月と12月の売上高は、平均すると各小売り企業の年間売上高の約20%を占める。つまり言うまでもなく、年末ホリデー商戦は多くの小売業者にとって重要な時期なのだ。

 今年はアメリカの消費者の一部に買い控えムードが見られる。そのため小規模小売り事業者らは、例年よりも低調な年末商戦の到来を見越して対策を練っている。コンサルティング企業のアリックス・パートナーズは、今年のホリデーシーズンの売上高の成長率が4%から7%にとどまると予測する。これは昨年の成長率である16%をはるかに下回る水準だ。仮にインフレ率が8%を超える場合には、小売事業者にとっては事実上の減収となる。

 その対策として事業者らは、商品在庫を早期に確保できるよう、早めの商品発注を実施しているという。過去2年間にさんざん苦しめられた、サプライチェーンの機能不全によるホリデーシーズン向け商品の在庫不足を何とか回避しようという狙いだ。また事業者らは、コストが上昇するなかでも、可能な限りのディスカウントの実施を計画している。同時に彼らは、パンデミック中に見られたオンラインショッピングでの購入増加のトレンドを経て、今年はむしろ実店舗やホリデーマーケットで直接ショッピングを楽しむ消費者の数が増加することを期待している。

 小規模小売り事業者らが利用するオンラインマーケットプレイス「フェア(Faire)」のCEOを務めるマックス・ローデス氏によると、クリスマスシーズン前に十分なホリデー向け商品在庫を確保することに過去2年間苦心してきた事業者からの早期発注が、今年は多く目につくという。新型コロナのパンデミック下では、ロックダウンによって工場閉鎖を余儀なくされ、コストが上昇し、輸送用コンテナやトラックの数も減少。結果的に多くの店舗が、ホリデー向けのデコレーション用品からギフト商品にいたるまで、あらゆる商品の不足に直面した。

 コンサルティング企業のA.T. カーニーが実施したサプライチェーン・マネジメント専門家協会(ASCM)向けの調査によると、アメリカにおけるビジネスロジスティクスのコストは、2021年に22.4%の急騰を記録し、総額1兆8500億ドルに達した。

 ローデス氏は「小売り業界にはいまでも一定の警戒感があります。ひとつ確実に言えるのは、『予測がつかない』ということです。我々としても、実際そこで何か起こるかの予測がつきません」と話す。今年9月中旬には「クリスマス」というキーワードが、ウェブサイト上での検索数最上位にランクされた。このトレンドが観察された時期としては、今年は昨年よりも2週間早く、2020年との比較では8週間も早いと同氏は指摘する。

 マット・ポンド氏は、サンフランシスコ地区でグルメ食材専門店の「エピキュリアン・トレーダー(The Epicurean Trader)」を運営している。事業構成は4つの実店舗、オンラインショップ、企業向けギフトバスケット事業から成る。過去数年間は、毎年11月にホリデー商戦向けの在庫積み増しに着手していた。しかし今年はすでに、グルメ食材、チョコレート、ワイン、ギフト用品といったアイテム在庫の増強を進めている。同氏の目から見ても、ほかの各企業もホリデー向けのギフトバスケット商品を例年よりも早い時期から発注しているという。

 ポンド氏は「誰もが在庫計画を前倒ししています。どこも同じく、過去2年の失敗を教訓にしているのだと思います」と話す。

 パンデミックが経済に与える悪影響は、すでにある程度まで沈静化した。しかし現在それに代わって、高いインフレ率と金利上昇がダブルパンチとなって消費者たちに襲いかかっている。全体として消費者支出は何とか持ちこたえているものの、アメリカの消費者の一部は生活必需品以外の商品購入額を低めに抑える必要に迫られている状況だ。消費者支出は経済活動全体の70%を占めている。したがって、たとえ一部であってもこの額が減少すると、社会に大きな影響が及ぶのだ。

 オンラインで販売するジュエリーブランド「ルーシー・ナッシュ(Lucy Nash)」のオーナーを務めるハンナ・ナッシュ氏は、過去2年にわたって力強い成長トレンドを見せていたイヤリング、ブレスレット、そのほかのジュエリー販売額の成長の伸びが今後は鈍化していくと予想する。その元凶は、インフレーションだ。

 同氏は「平均的な消費者の手元に渡るお金の額は、過去よりも減っています。したがって、消費者の生活費の減少がホリデーショッピングでの支出額にも反映されると予想します」と話す。一方で、年末ホリデーシーズンに実店舗でショッピングする消費者の数の増加を見込んでいる。

 現金やデビットカードでの支払いを含め、あらゆる形式の支払い記録のトラッキングを行う「マスターカード・スペンディングパルス(Mastercard Spending Pulse)」によると、小売り商品売上総額のなかでオンライン決済が占める割合は、2019年の11.5%から2020年の17.7%へと大きく跳ね上がり、そこからさらに、昨年は18.8%にまで続伸した。

 ナッシュ氏は今後ディスカウントをさらに強く打ち出し、買い物客らを引き付けるためのセット販売アイテムを提供していく予定だ。今年初めて商品購入してくれた新規顧客向けに、10%から15%のディスカウントを適用する。また、単品アイテムとして購入するよりも約20%お得になるセット販売商品を提供する予定だ。

 アマゾンやウォルマートなどの小売り大手も、買い控えムードが広がるアメリカ国内の消費者に向けてホリデーセールを実施している。アメリカの調査グループ企業の「ヌメレーター(Numerator)」によると、アマゾンは10月11日から12日までの2日間、割引セールイベントを実施した。そこでの平均注文金額は46.68ドル。これは今年7月実施のAmazonプライムデーのセールイベントでの買い物客らの購買額平均に比べ、13ドル低い金額だ。

 一部の事業者は、より多くの消費者がホリデーマーケットや実店舗でのショッピングにシフトすると予想されるこの機会を最大限に活用したいと考えている。

 キンバリー・ベザディー氏は、ニューヨーク州バッファローを拠点とする「リード・イット・アンド・イート・ボックス(Read It & Eat Box)」の経営者だ。この店では、箱の中にフードと本がセットで入ったテーマボックスを販売している。同氏は2020年、新型コロナのパンデミック下で事業をはじめた。オンラインショップも併設しているが、それでもホリデーマーケットがパンデミック以前の盛況を取り戻し、売り上げが伸びることを期待している。この事業はホリデー商戦に大きく依存しており、10月から12月の期間収益が、年間収益の約40%を占めている。

 ベザディー氏は「今年はインフレ率が高く、消費者はお買い得情報に従来以上に敏感になっていると予想されます。ですから今回はそれを見越して、セット販売商品やお買い得商品を盛り込む形でホリデーマーケット戦略を調整しました」と話す。その一例として、ブラックフライデーには25ドル相当のブラインドデート関連書籍がセットになったギフトボックスを60ドルで販売する。(訳者注:ブラインドデートとは友人の紹介などを通じて、面識のない相手とデートすること)

 マリアナ・リアン・ワインスタイン氏は、2019年にニューヨーク州ポーリングで「ウィキッド・フィンチ・ファーム(Wicked Finch Farm)」というブランドを立ち上げた。洋酒入りジャムやマシュマロ、そのほか農場に関連したギフト商品をおよそ25の店舗で販売している。同氏は現在、オンライン販売の伸びが今後は鈍化に転じることを見越して、実店舗での在庫確保に注力している。

 同氏は「今年に関しては、消費者が実際の製品を見たり触れたりすることを楽しむことがトレンドになると思います。ですからホリデーシーズンに間に合うよう、実店舗の在庫の増強に力を入れています」と語る。

By Mae Anderson AP Business Writer
Translated by Conyac

Text by AP