自ら虚偽情報をツイートするマスク氏 ツイッターから離れる広告主とセレブ

Ringo H.W. Chiu / AP Photo

 10月27日、テスラとスペースXの最高経営責任者(CEO)を務めるイーロン・マスク氏が長期間に及ぶ交渉の末ツイッター買収を完了し、同社CEOに就任した。これまで一般コミュニティやセレブ、企業が無料で利用できる公共の掲示板的役割を果たしてきたツイッターだが、元々保守派寄りのマスク氏がCEOに就任したことにより、アメリカのリベラル派は、ドナルド・トランプ氏が復活し、このプラットフォームが右派の溜まり場と化してしまうのではないかという懸念を抱いている。そのようななか、最近は自身のビジネスだけでなくアメリカ政治や国際情勢でも持論を展開することが多くなってきたマスク氏自身が、早速ツイッターで暴走してひんしゅくを買っている。またマスク氏が新オーナーになったことを快く思わないセレブや、広告主企業のツイッター離れも進んでいるという。

◆マスク氏自ら虚偽情報をツイート
 先月末、ナンシー・ペロシ下院議長の夫が、自宅に侵入した陰謀論者の暴漢に襲われ重傷を負った。NBCニュースによると、マスク氏はその事件に関するヒラリー・クリントン元国務長官のツイートに返答し、ペロシ氏の夫の事件は「痴話喧嘩」だと根拠なく主張する右派メディアの記事をツイート。しかしCEOでありコンテンツ制御を行うべき身でありながら噂を拡散するのは適切ではないと気づいたか、それとも部下や弁護士に注意を受けたのかは定かではないが、その後問題のツイートを削除した。しかし同記事によると、削除時点ですでに2万4000のリツイートと8万6000の「いいね!」がついていたという。

 マスク氏のそのような言動が理由か、マスク氏は今月4日、企業の広告控えによる「巨額の収益減少」が起こっているとツイートした。同氏によると、「運動家グループが企業に圧力をかけている」という。それはCEO本人が右派メディアの虚偽情報をツイートしていれば無理もないかもしれない。マスク氏はこのツイートで「我々は運動家を喜ばせようとあらゆる手を尽くしている」としながらも、同じツイートの最後では「(運動家は)言論の自由を滅ぼそうとしている」と批判している。

 ペロシ氏の夫に関するマスク氏のツイートは、誤情報を拡散して右派の肩を持つものだとも言えるだろう。そんなプラットフォームに企業が広告を出さないのは「言論の自由を滅ぼすこと」ではなく、それこそ企業が言論の自由を表現し、行使していることにほかならない。

Text by 川島 実佳