遺伝子組み換え「スーパートマト」がもうすぐ米スーパーに? USDAが認可
◆過去には挫折も 承認プロセス見直しで再チャレンジ
マーティン氏は、2007年にノーフォーク・プラント・サイエンス社を共同設立し、紫色のトマトの商品化を目指したが、欧州やアメリカの規制により阻まれることとなった。当時は、遺伝子組み換え食品の安全性についての科学的知識が乏しく市民の不安も大きかったという。そのため規制が厳しく、最大手の農業企業しか対応できない難しいプロセスが市場参入のハードルとなっていた。現在栽培されているGMOのトウモロコシや大豆の認可には、推定1億ドル(約146億円)の費用と10年の歳月が費やされたという。(タイムズ紙)
しかし、昨年USDAは1987年以来初めて遺伝子操作製品の承認プロセスを見直した。改良された植物の植物害虫のリスクを審査するUSDAの動植物検疫局(APHIS)は、今回の紫色のトマトについては、ほかの栽培されるトマトと比較し、植物害虫のリスクが増加する妥当な経路を特定できなかったと結論。国内で安全に栽培できるとして、規制の対象外と認めた。
同社のアメリカ事業の担当者、ネイサン・パンプリン氏は新たな時代の幕開けだと歓迎している。次のステップはFDAの認可だが、これをクリアすれば来年には紫色のトマトが市場に出る可能性も出てきた。さらに今後は、健康に役立つ別の栄養素を豊富に含むトマトなど、いくつかの候補を準備中ということだ。(タイムズ紙)
◆GMOが人類を救う? 科学に基づいた理解を
もっとも、誰もがこの新しいトマトに熱狂しているわけではないと健康情報サイト『WebMD』は述べる。GMOに否定的な団体は、GMOであることを知らずに消費者が購入することを懸念する。また、USDAの承認プロセス見直しで、まったく規制のない遺伝子応用の扉が開かれる可能性も指摘している。ちなみにタイムズ紙によれば、紫色のトマトを誕生させた本国イギリスでは、GMOの栽培・販売は禁止されている。
一方パンプリン氏は、GMOに懐疑的な人の存在を認めたうえで、確かな情報を集めて科学に基づく事実や消費者への恩恵について学んでほしいとした(WebMD)。
さらに、遺伝子組み換え食品を研究する科学者たちは、持続可能性、気候変動や健康など、社会が直面する問題に目を向けてきたと説明。多くの人々が重要な課題を踏まえて、バイオテクノロジーを見直してほしいとしている。(CNN)
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