「培養肉」食べる心の準備は? 味・価格の競争力向上、もうすぐ市場へ

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◆急速に進化中 味、価格とも競争力向上
 培養肉の研究は20年ほど前からされてきたが、現在は「第2の波」が来ているという。ニュー・サイエンティスト誌によれば、現在60を超すスタートアップ企業が培養肉の開発に乗り出しており、生産規模の拡大とコスト減を目指している。多額の投資が行われ、メディアの注目も高まっている。オランダ、イスラエル、カリフォルニアの企業が先頭に立っており、カリフォルニアのメンフィス・ミーツ社は最近、1億8600万ドル(約197億円)の資金調達に成功して業界を驚かせた。

 味のほうもかなり向上しているようだ。培養肉の開発競争を描いた「Billion Dollar Burger」の著者チェイス・パーディ氏によれば、カリフォルニアのジャスト社が作ったカモ肉のチョリソ(ソーセージ)はしっとりとして豊かな風味があったという。初期の培養肉は赤身ばかりでおいしくなかったが、最近では脂肪の培養法も発達し、本物の味に近づきつつあるという(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。

 高価な培養肉だが、イスラエルのフューチャー・ミート社は、2022年までに1ポンド(約454グラム)を10ドル(約1070円)にまですることができるとしている(NYT)。前出のCuatrecasass氏は、馬から馬車、車へと革命が起こったように、今度は食べ物でそれが起ころうとしていると述べる。同氏の予測が正しければ、2022年までに価格も手ごろになり、2023年までにはレストランメニューやスーパーマーケットの棚に並ぶようになるだろうとロウ氏は述べている(フォーブス誌)。

◆超えるべきハードルも 成功は消費者次第
 もっとも、培養肉が市民権を得るためにはいくつかの課題がある。パーディ氏は、アメリカでは培養肉を排除し既得権益を守ろうとする食肉ロビー団体の抵抗が大きいと述べる。さらに、培養肉という新しいテクノロジーには答えの出されていない疑問がつきまとうことも事実だ。たとえば通常の肉と違い、培養肉には病気などに対する免疫が欠如しており、この点には不安が残るという(NYT)。

 Cuatrecasass氏は結局のところ、培養肉の成功は、消費者の反応にかかっていると述べる。2015年のオランダの調査では、9%の人が培養肉のアイデアを拒絶し、3分の2が食べるのはためらわれるとしたという。遺伝子組み換え食品を嫌う人に加え、食品の出所、価格、味、食感などを気にする消費者は多いということだ(フォーブス誌)。倫理的で環境にもよいとわかっていても、未知の食べ物に対する人々の反応はいつも保守的だ。培養肉の未来は、まだまだ不透明と言えそうだ。

Text by 山川 真智子