テスラの対抗馬に? リビアンを待つ試練、強力な援軍アマゾン・ベゾス氏
◆リビアンを待つ「生産地獄」の試練
開拓者の立場から追われる身に転じたテスラだが、マスク氏は自社の経験に照らし、リビアンが十分な生産能力を獲得するまでに相応の障壁が立ちはだかるとも見積もっているようだ。テスラは2018年、生産ラインの相次ぐトラブルによって生産計画の達成が危うくなり、資金繰りの窮地を迎えていた。WSJは、マスク氏が自ら工場の床を寝床とし、製造は急ごしらえの仮設テント内のラインで行われていたと報じている。当時はマスク氏が「生産地獄」と呼ぶ状況にあり、同社資金はわずか数週間で枯渇する状態にあった。テスラのこのような経験を踏まえれば、リビアンの黒字化への道のりも相当困難な展開が予想される。
生産ラインがいつどのような規模で稼働できるかがリビアンの命運を左右するとみられ、同社としてもEV工場の建設を急ぎたいところだ。しかしブルームバーグは、当面の生産台数は限定的との見方を示している。規制当局に提出された資料によるとリビアンは、2023年末までに80億ドルの資本支出を見込んでいる。年間の生産台数を20万台にまで拡大したい方針だが、新工場の完成までは生産能力が限定的となると同社は認めている。現在アリゾナ州など複数の候補地から建設場所の選定を行っている段階だ。8月の報道では、テキサス州に50億ドル規模のEV工場を建設するとの情報が出ていた。
◆アマゾンの思惑
生産拡大に伴い、有望な顧客になるとみられるのが米アマゾンだ。同社はリビアンの筆頭株主であり、まだリビアンが多数の新興の一社にすぎなかった2019年、株式の20%を取得するという戦略的投資に動いた。ブルームバーグによると同社はEV配送車10万台をリビアンに発注する意向であり、ヨーロッパでの配送に投入する計画だ。
アマゾンが新興EV企業に肩入れする背景には、少なからずジェフ・ベゾスCEOの私的なライバル心が見え隠れする。ベゾス氏は宇宙開発企業「ブルーオリジン」の設立者であり、マスク氏のスペースXと火花を散らす。米CNN(11月14日)は「リビアンに強力な援軍:イーロン・マスクに嫌がらせしたいというジェフ・ベゾスの執念」と題し、二人の争いを取り上げている。「彼らの争いは何年も前に遡る」「ただひとつ確かなのは、大富豪ともなればセラピーを受けることは選ばず、敵に嫌がらせをするためなら会社を丸ごと買収してしまうということだ」と記事は述べ、アマゾンのリビアンへの投資には私情が絡んでいるとみている。
かつてテスラが存在感を放っていたEV市場も、現在では複数の新興が姿を現し始めている。二社が足の引っ張り合いを演じていられる時代はそう長く続かないかもしれない。
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