NYの3つ星レストラン、ヴィーガンメニューのみに その理由とは

Pablo Monteagudo / flickr

 今回、イレブンマディソンパークがヴィーガンメニューに変更した理由もそこにある。シェフのダニエル・ハム氏は「現在のフードシステムは、多くの点で持続可能ではない」と述べる。ハム氏は昨年春、パンデミックによりニューヨークで高まる飢餓問題に対応するため、「イレブンマディソントラック」というフードトラックキッチンを、ニューヨーク市の、持続可能で公平な食料システムにより飢餓をなくすための非営利団体「Rethink Food」と立ち上げた。今後、イレブンマディソンパークで食事をするごとに、イレブンマディソントラックでも5食の食事を提供する。1993年から1999年までニューヨーク・タイムズ紙のグルメ雑誌で編集者兼レストラン評論家だったルース・ライチェル氏は、「イレブンマディソンパークのようなレストランは教育機関」であり、ハム氏の例が今後のアメリカフードの方向性に影響を与えると述べた(ニューヨーク・タイムズ紙)。

◆ほかの有名店や食業界にも影響
 ほかにも、ベイエリアのシェフ、ドミニク・クレン氏は、2019年にすべてのレストランから肉の提供をやめた。今年の1月には、フランスのヴィーガンレストラン「ONA」が初のミシュランスターを得た。 また、シェフのアン・キム氏は2月、野菜とマサをベースにしたメニューのレストラン「Sooki&Mimi」をオープンした。レストランに限らず、料理ウェブサイト『Epicurious』も、世界の温室効果ガス排出量の14.5%が家畜が原因であるという国連食糧農業機関(FAO)からのデータを引用し、家畜牛が環境に与えるダメージと、気候危機の加速を懸念して、今後牛肉レシピを掲載しないと発表した。また、バーガーキングなどの多くファストフード店も、肉の代替品を提供している。

 ハム氏は、イレブンマディソンパークのウェブサイトで、「正直にいうと、夜中に起きたとき、かつて私たちの代表作であった料理をなくすリスクについて考えてしまうことがある」と率直に述べている。ヴィーガンメニューに変更することで食材費は下がるが、従来通りのイレブンマディソンパークの評判に見合う料理を作り出すためにシェフの人件費は上がる。またかなりの労力が必要であり、時間のかかるプロセスでもある。しかし、だからこそ世界トップレベルの有名レストランがヴィーガンメニューに変更することにそれだけの意味があり、メッセージ性を含んでいる。

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Text by sayaka ishida