「ヴィーガン・ビューティ」美容・ファッションに広がるトレンド

ステラ・マッカートニー|Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com

「ヴィーガン」と聞いて、最初に思い浮かぶのは食事である人が多いだろう。しかし、このヴィーガンと呼ばれる「菜食主義」の考え方は、体内に取り入れる食事に限らず、コスメやファッションなどの身につけるものやライフスタイルにも影響を与えてきている。今年のVeganuary(英語のVeganとJanuaryをかけ合わせた、1月の31日間ヴィーガンにチャレンジする運動)に参加した人は、昨年よりも45.2%多い58万人以上であった。この数字からもわかるように、ヴィーガンに興味をもつ人は増えている。若干の違いはあるものの、日本では「ヴィーガン・ビューティ」は「エシカルコスメ」や「オーガニックコスメ」と呼ばれることもある。

◆ヴィーガン化粧品市場
 ヴィーガンに対するこの需要は、ほかの業界、とくに美容業界で注目されている。ヴィーガン化粧品とは、動物性成分や動物由来成分(蜂蜜、蜜蝋、ケラチンなども)を一切含まない化粧品のことを指す。また、同様のものと思われることが多いが「クルエルティ・フリー」は、その製品が動物実験によって安全性テストが行われていないことを指す。ヴィーガンの人々は、食品だけでなく衣類や化粧品などのあらゆる分野での動物性製品を避けようとしているため、ヴィーガンコスメの需要が高まり、ヴィーガン化粧品産業を後押ししている。ヴィーガン化粧品市場は、2027年までに236億ドル(約2.7兆円)規模に達すると予想されている

 皮膚科医のデニス・グロス博士は、「消費者、とくにミレニアル世代とZ世代は、個人の価値観に沿った商品を探し、購入しようとしていると思う」と述べる(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。同記事によると、実際、彼の患者もヴィーガンやクルエルティ・フリー製品を要望することが多い。そのため9年前、販売するスキンケア商品をヴィーガンとクルエルティ・フリーに変えた。成分の再配合には3年を要した。現在、52アイテムのラインナップのうち、真珠粉と蜜蝋の2つの製品だけが動物由来の成分を含んでおり、代替品が見つかり次第、変更する。

Text by sayaka ishida