アジアの屋台街が衰退の危機? ストリートフード文化の今後

シンガポールのホーカーセンター(2016年8月15日)|Annop Itsarayoungyuen / Shutterstock.com

◆コロナの影響で廃業を迫られる屋台
 追い討ちをかけたのがコロナウイルスの大流行だ。シンガポール政府は4月、コロナ感染対策として外出制限措置を実施し、ホーカーセンターでの食事を全面禁止とした。テイクアウトでの営業は許可されたものの、営業を続けることで損失が出てしまうため営業を停止する店も多かった。

 またインドの日刊紙デカン・ヘラルド(2020年7月14日)によると、インドに300万軒あるとされる屋台のほとんどがコロナ流行の影響を受け、多くの屋台オーナーが廃業して村に戻ることを余儀なくされているという。

◆ストリートフード文化を守ろうという動きも
 シンガポールでは、コロナ感染対策の外出制限措置が発表された直後、懸命に働く屋台オーナーたちを応援しようという趣旨の複数のソーシャルメディアグループが立ち上がった。なかでも、フェイスブック上のグループ「ホーカーズ・ユナイテッド・ダーバオ2020」は、発足後数日で2万5000人のメンバーを集めた(1月6日現在、メンバー数28万人以上)。グループ内では写真やコメントつきで数多くの屋台が紹介されており、オンライン注文用のリンクや電話番号などが掲載されている。

 政府も動き出している。ガーディアン紙は、シンガポールの国家環境庁が2021年に新しいプログラム 「ホーカーズ後継計画」 を開始するなど、ストリートフード文化の保護を計画していることを伝えている。ベテランのオーナーが意欲的なオーナーとペアとなってスキルやレシピ、ビジネスの知識などを伝承し、引退時には屋台を引き継ぐことを目的としたものだ。

 またCNNは、インドネシアで政府がフードライターをコンサルタントとして雇用することでストリートフード文化を保護しようとする動きがあることや、台北の屋台街がモバイル決済アプリと宅配アプリを導入して変化を図ろうとしていることなどを伝えている。

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Text by 中原加晴