2度目の台湾なら台南はどうだろう。

台南の名物料理と言えば「台南担仔麺(たいなんたーみーめん)」。台南に到着してまず食べた一杯は、小さめの椀に盛られた中華麺。海老がのっていて、オプションでアヒルの煮卵を追加。あっさりとしたスープに、ピリッとした海鮮肉みそが効いている。量が少ないのでもう1杯、といきたいところだが、ちょっとした「おやつ」と割り切ることにした。この先、まだまだ旨いものがあるのだ。

まだ日本人観光客が少ない台湾南部

台湾は様々な海外旅行先の人気調査で、常に上位にランキングされる国。例えば、日本旅行業協会が発表している年末年始旅行人気ランキングでは、2017年、2018年連続で台湾が1位だ。「近くて安心な旅行先として、年代、旅行の形態問わず人気」とコメントされている。

台湾旅行なら、まずは台北。世界四大博物館の一つともいわれる国立故宮博物院で美術品を鑑賞したり、台湾料理を楽しんだり、定番のアクティビティはどれも魅力的だ。東京の街を歩き回るような街歩きも、自分なりの発見があって楽しい。また、台湾北部にある人気の九份などは1時間ほどでアクセスできるので、足を伸ばす人が多い。

もし訪れるのが2度目の台湾なら、台湾南部の台南はどうだろう。「食の都」と呼ばれるように、台北ではお目にかかれないグルメを堪能する旅は、1泊2日でも十分に楽しめる。

日本の新幹線で台南へ

台湾の国鉄が台湾鐡道、その新幹線は台湾高速鐡道、通称高鐵だ。高鐵は日本の新幹線が導入されているので、見かけも車内もすっかりおなじみのデザイン。台北から台南までは3時間30分ほどだ。台北を離れると車窓からの眺めは農村地帯へと変わり、また次の都市へと繋がってゆく。そうした車窓からの眺めも楽しい。そして、その土地ならではの駅弁が楽しい。

台北駅の台鐵便當本舖で購入した、丸い弁当箱に入った排骨弁当を早速いただく。中華のスパイスが香る、甘すぎないタレに絡ませた排骨が白飯に合う。付け合わせは白身魚のフライに、ブロッコリー、そして煮卵はもちろんアヒルのタマゴ。よく味が染みていて美味しい。旅心が盛り上がってくる。

煮込んだ豚のタンを挟む割包

冒頭で紹介した台南担仔麺をおやつ替わりにたいらげた後、散策に出た。台南の街はそれほど広くはないが、郊外に向けて住宅地が広がるので実際にはかなり広い地域を指す。中心部は歩ける距離に観光名所や食堂が点在しているし、歩行者専用の道もあるので歩いて回るのが楽しいのだ。

古い町並みが残っていながら、新しい雑貨店なども多く見られるのでぶらぶらしていると面白いものに出くわす。そうして歩いていると、次に食べようと決めていた、台湾風バーガーともいえる割包の店、「阿松割包」に到着。間口2メートルほどの小さな店で、テイクアウトする人が多い。ここの目玉は、豚舌を挟んだ割包だ。よく煮込まれたタンがほろっと口の中でほどける。味付けはとてもシンプルで絶妙。淡白な割包(パンの部分)との相性が良い。

赤崁楼わきのスィーツ店で杏仁豆腐かき氷!

割包の店から数分で、赤崁文化園区にたどり着く。ここには「赤崁楼」という、オランダ人が17世紀に建てた歴史的な建物があり、一見に値する。街の喧騒を感じさせない、緑の多い敷地が気持ちいい。当たり前だが、台湾は日本よりも気温が高い。だから冷たいものが欲しくなる。この赤崁楼の西側の通りにあったスィーツの店に入って、杏仁豆腐のかき氷をいただいた。甘く煮た小豆は日本の粒餡よりさらに潰していない感じで、煮豆に近い。

自分はかなり地味なトッピングを選んだのだが、他にはマンゴー、イチゴ、数種のアイスクリームなどもあるので、自分の好みでオーダーできる。こういった杏仁豆腐かき氷の店は、台南のあちこちにあるので、散歩途中の休憩やクールダウンに最適だ。

夜はちょっと贅沢にカニおこわ

夕方になって台湾料理の名店、「阿霞飯店」に出かけた。まずは腸詰でビール。台湾の腸詰は甘いものが多く、この店のものも同様だが、その肉質がとってもジューシー。ふんわりとした食感で上品だ。

そして台南といえばカニおこわ。カニの甲羅を開いて、豚肉、タロイモ、干しエビ、シイタケが入るご飯の上にのせて蒸したもの。オレンジ色のカニのタマゴが絶品だ。台北でも食べることはできるだろうが、台南のほうが価格がリーズナブルかもしれない。とにかく、この旨さは現地以外では味わえないと思う。

地元の人たちが夜を過ごす台南花園夜市へ

夜の散歩がてら、と言っても30分ほど歩いて夜市へ。この花園夜市は週に3日開かれており、地元の人たちが集まって盛り上がる。

屋台には旨そうな台湾系屋台料理はもちろん、中東のケバブや寿司までが並ぶ。屋外ゲームセンターもあって、子供たちが集まっていた。暑い夜に外で過ごすというライフスタイルなのだ。

朝はサバヒーのお粥で体をを温める

翌朝は地元の人たちに人気の粥の店、「阿堂咸粥」へ。すこし広い道の交差点にある店で、店内も賑わっているのだが、店頭でテイクアウトする人たちが圧倒的に多い。“サバヒー”はサバに似た魚で、日本では流通していない。青背の魚なのだが、その身は白身でとてもあっさりしている。

サバヒーを焼いた身をほぐしたものが、お粥に入っている。香ばしい香りが食欲をそそる一品。それにしても、バイクで来る客がビニール袋にいれたお粥を持ち帰る姿はいかにも台湾。単純に「すごいな」と感心してしまうのだった。

台北に帰る前に、ちまきを頬張る

モチ米を、豚肉などの具といっしょに笹の葉に包んで蒸したちまき。わざわざ包むなんて面倒だなと思うが、やっぱり旨いちまきには笹の香りがとても大事なのだ。

「再發號肉粽」は素朴な内装ながら、「八宝ちまき」というアワビ、イカ、栗、干しシイタケ、干しエビ、豚肉までが入っている高級ちまき。これは他では見たこともない豪華さ。今は4代目で100年続くという名店ならでは。

これだけおいしいものを食べて1泊2日。台北から足を運んでもその価値は十分にある。また、数日を過ごしても、おいしさ探求には足りないかもしれない。


All photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/