アジアの屋台街が衰退の危機? ストリートフード文化の今後

シンガポールのホーカーセンター(2016年8月15日)|Annop Itsarayoungyuen / Shutterstock.com

 地元庶民の食事を支え海外旅行者を魅了する、世界各地のストリートフード。とくにアジア各国の屋台街は連日多くの人でにぎわいをみせる。台湾のナイトマーケットやシンガポールのホーカーセンター(屋台や店舗を集めた複合施設)など、世界的に有名な屋台街もある。しかし都市の発展と人々の食を支えてきたストリートフード文化がいま、衰退の危機を迎えているという。

◆屋台オーナーの高齢化、政府による排除
 英ガーディアン紙(2020年12月21日)は、ストリートフード文化衰退の理由の一つに屋台オーナーの高齢化をあげる。たとえば、シンガポールにおける屋台オーナーの平均年齢は59歳。さらに、屋台の仕事は長時間労働かつ体力勝負であるため屋台オーナーになりたがる若者もほとんどいない。自分の子供に跡を継がせるべきかどうか苦悩するオーナーも多い。

 CNN(2020年12月22日)は、高齢化のほかに、政府による介入をその理由の一つとしてあげている。衛生基準や建築基準を満たしていないことや安全性への懸念から、また「街を美化する」という名目をつけて、屋台の排除やマーケットの移転・再建などを行ってきた政府も少なくない。

 たとえばタイの軍事政権は2017年、街の美化を目的としてバンコクの主要道路から屋台を一掃した。移転を試みたものの再建場所はアクセスの悪さゆえに客足が伸びず、屋台は次々に廃業に追い込まれた。

 また北京でも、政府による封じ込めによって自然発生的な屋台やマーケットは事実上根絶された。かつてナイトマーケットで賑わっていた商店街は、いまでは巨大デパートや飲食店に囲まれた歩行者天国になっている。

Text by 中原加晴