グーグル創業者2人が退任 独禁法調査が熱を帯びるなか

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 プライバシーや市場競争力を濫用している可能性があるとして、司法省や議会のほか連邦政府や州の規制当局までもがグーグルに強い関心を寄せているなか、同社の共同設立者が会社トップの座を降りようとしている。

 しかし、長らく後継とみられていたサンダー・ピチャイ氏が同社の顔として業務を担う準備は十分整っている。

 ラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏はそれぞれ、グーグル親会社アルファベットのCEOと社長を退任する。シリコンバレーのガレージで設立したスタートアップを二人は20年以上も率いてきたが、その体制が終わろうとしている。2015年からグーグルCEOを務めているピチャイ氏がアルファベットも率いていくことになる。ブリン氏の後任となる社長は置かないようだ。

 プライバシーの運営と多岐にわたる事業特性に関連して、グーグルはアメリカとヨーロッパの当局から批判と調査要請を受けている。今後、議論の矢面に立つのはピチャイ氏となるが、ページ氏が完全に責任から逃れられるわけではない。

 民主党大統領候補のエリザベス・ウォーレン上院議員は12月4日、ページ氏を標的にしたメッセージをツイートした。「急ぎ督促:いまなお議会での証言を期待している。肩書を変えても取締役にとどまり、会社をうまく統制しようとしても、説明責任から逃れられるわけではない」と述べている。

 ページ氏とブリン氏はいまでもアルファベットの議決権を過半数有している。4日にはアルファベット株価が2%上昇したことを受け、二人の資産はそれぞれ10億ドル増加した。フォーブス誌によると、二人はそれぞれ500億ドル以上の資産を有している。

 昨年、アメリカの選挙を揺さぶるためにロシアがインターネットサービスを操作したとされる件に関する公聴会にページ氏、ピチャイ氏のいずれも出席しなかったとして、グーグルは議会関係者の怒りを買った。議会の証言台にはページ氏の席が設けられたが、そこには誰も座ることがなかった。他方、フェイスブックとツイッターからは上級幹部が出席して証言した。腹を立てた議員らは、グーグルを「傲慢」とこき下ろした。

 長年テックアナリストをしているクリエイティブストラテジーのティム・バジャリン氏は、「火の勢いが増しているという理由で、ブリン氏とページ氏が退任するわけではない」と言う。また、グーグルにおけるピチャイ氏の役割は、今後ますます増えると予想される政府からの調査要求に対処することだとしている。

 46歳のブリン氏とページ氏は、脚光を浴びるシーンから明らかに身を引いている。今年初めには、社員との間で行われる定期的な対話集会に二人とも顔を見せなかったほか、ページ氏は当時CEOの座にあったにもかかわらず、今夏のアルファベット株主総会に参加すらしなかった。

 他方、アルファベットはピチャイ氏を事実上のリーダーに据える動きをみせており、株主総会や決算説明会の場では同氏の発言を会社トップの発言としてきた。昨年12月、同社の検索サービスが保守派に対し偏見を持っていると主張する共和党から会社を守るため、ピチャイ氏が議会で証言した。ピチャイ氏は先週、社員との対話集会を週次から月次の開催に変更した。

 両氏が退任しても同社のビジネスにはほとんど影響が及ばないだろう、と投資会社コーエンのアナリストは書簡で述べている。ピチャイ氏のアルファベットCEO就任は「一つの手続き」にすぎないとしている。

 ピチャイ氏は社員にあてた社内メールのなかで、新たな職に就くことはグーグルから一歩身を引くことにはならないと説明し、「今後も引き続きグーグルに注力していく。そして、コンピューティングの境界を広げ、誰にとっても役に立つグーグルを作るための取り組みを深めていく」とコメントしている。

 インド系移民のピチャイ氏(47)は入社15年、グーグルクロームブラウザの構築やアンドロイドの統括で主導的な役割を果たしてきた。エンジニアリングの経歴を持つ同氏はグーグルの製品部門を率いるようになり、2015年のアルファベット設立時にはグーグルのCEOに抜擢された。語り口が柔らかで、信頼される経営者として知られている。

 アルファベットにとってグーグルはいまも、稼ぎ頭の主要子会社である。しかし同社には、見込みのないプロジェクトとして知られる事業もある。ドローン企業のウィングや自動運転車のウェイモなどだ。

 設立当初にグーグルが注力していたのは、成長するインターネットを整理するという事業だけだった、1995年にスタンフォードの大学院生としてページ氏とブリン氏が出会って間もなく、グーグルが設立された。

 それがいまや世界で最も影響力のある企業の一つになった。グーグルはオンライン検索とデジタル広告を支配しているほか、世界で最も広く使用されているスマホ用OSのアンドロイドを製作している。オンラインツールや電子メール、クラウドコンピューティングシステムに携帯電話、スマートスピーカー機器など、グーグルのサービスを何も使わずに一日を過ごすなど、いまでは考えられない。

 グーグルは自社の成長とともに、広告ターゲティングのために行う個人情報の収集と利用について、プライバシーの信奉者たちから圧力を受ける機会が多くなった。検索サービスやオンライン広告で市場支配力を濫用し、競合を排除しようとしているという批判もある。アメリカ議会、司法省、州検事総長のほかヨーロッパの関係当局からも幾度となく証言を求められるようになった。

 今回の退任について報じたニュースのなかで、ページ氏とブリン氏は、設立後20年で会社が「進化、成熟した」と述べている。今後は取締役、株主として積極的に関わっていくと二人は公言している。

 グーグルで最も長くCEOを務めたのはエリック・シュミット氏である。別会社の役員であった彼は2001年、ブリン氏とページ氏の「後見人」としてその地位に就いた。成長を続ける企業を統率していくのにブリン氏とページ氏では経験が不足しているという懸念の声が取締役会にあり、シュミット氏がCEOに就任したのだった。ページ氏が再び会社のトップになる2011年までシュミット氏はCEOを務め、今年6月までは取締役を務めていた。

By RACHEL LERMAN AP Technology Writer
Translated by Conyac

Text by AP