民泊最大手エアビー、20年にIPO実施の意向

AP Photo / Eric Risberg

 エアビーアンドビー(Airbnb)は9月19日、2020年に株式を公開する意向だと発表した。良くも悪くもホテル業界に混乱を引き起こしたホームシェアリング企業が、満を持して動きを見せる。

 エアビーアンドビーからの発表は簡潔なものであった。新規株式公開(IPO)の実施予定日を公表することはなく、また、なぜこのタイミングかという点についても触れることはなかった。IPO調査会社ルネッサンス・キャピタルによると、2018年の同社の企業価値は310億ドルだったという。

 サンフランシスコに本拠を置く同企業は、2008年に創業された。幾ばくかの資金を必要としていた共同創設者のブライアン・チェスキー氏とジョー・ゲビア氏は、当時住んでいたアパートに3枚のエアマットレスを敷き、宿泊場所と無料の朝食を提供することを宣伝するウェブサイトを開設した。そして、この新しい事業を「エアーベッド・アンド・ブレックファスト(AirBed and Breakfast)」と名付けた。

 エアビーアンドビーはそれ以後、ブッキングドットコム(Booking.com)に劣らぬほどの世界最大手民泊仲介サイトへと成長を遂げた。毎秒6人の利用客がエアビーアンドビーに掲載されている宿泊施設へチェックインしており、その物件数は世界中10万の都市で700万件を超える。その中の1,000都市では1,000件を超える物件が登録されているが、8年前はわずか12都市のみであった。

 2017年、2018年の両年において、税引前の収益では十分に採算の取れる業績だったとエアビーアンドビーは発表しているが、具体的な金額は公表しなかった。同社によると、2019年第2四半期の収益は10億ドルを大幅に超える結果となり、四半期収益が10億ドルを突破したのは創業以来2度目だという。四半期利益については言及していない。

 昨今続いたIPOでの大失敗を受け、投資家は慎重になっているかもしれない。配車サービスのウーバー(Uber)やリフト(Lyft)は2019年前半に上場したものの損失を出し続け、両社とも株式公開価格をはるかに下回る価格で取引されている。シェアオフィス事業を手掛けるウィーワーク(WeWork)も大きな損失を計上しており、IPOの延期が決定されたばかりだ。

 ルネッサンス・キャピタルのプリンシパル、キャサリーン・スミス氏によると、エアビーアンドビーとの違いはその収益性にあると考えられる。市場で悪戦苦闘している企業は、投資家に対し、収益性につながる道筋をうまく示していないという。しかし、IPO市場全体の業績は上々である。ルネッサンス・キャピタルIPO投資ファンドは、ピンタレスト(Pinterest)やビヨンド・ミート(Beyond Meat)といった企業の成功例により、今年のS&P 500指数が30%上昇していると動向を注視している。

 規制上の課題を抱えるスタートアップ企業に携わるベンチャー・キャピタリスト、ブラッドリー・タスク氏は、エアビーアンドビーはニューヨーク州との協定案を探る必要があると話す。同州が制定した規制をめぐり、長年にわたって争いが続いている。ニューヨーク州法では、利用者と同居することなく、30日未満の短期間でアパートを賃貸することが禁止されている。数ヶ月前、同企業はニューヨーク市内で違法に宿泊施設を提供しているホストに関する情報を徹底的に調べた。

「少なくとも、株式の公開を予定している都市において非合法的であることは、IPOを阻むことになりかねない」とタスク氏は述べる。

 タスク氏によると、破壊的で複雑なロジスティクスを抱える同企業の株を買うことに投資家は満足する必要があるという。エアビーアンドビーは自社が成功し得ることを何らかの方法で、ウーバーやウィーワークよりも徹底的に証明してきた。

「エアビーアンドビーが求めた変化は、すでに自分たちで創り出している」とタスク氏は述べる。

 同企業は来たるIPOに備え、数年前から提供サービスを拡大してきた。寝床を探すだけのサービスに心惹かれない利用客を呼び込むため、ブティックホテルと特定基準を満たした高級物件をサービスに加えた。2017年、最高レベルのサービス提供を推進するため、ラグジュアリー・リトリーツ(Luxury Retreats)を買収した。

 2019年5月、エアビーアンドビーは旅行者が宿泊場所を直前に予約できるホテル・トゥナイト(Hotel Tonight)を買収した。さらに3ヶ月後、法人向けにサービス付きアパートを提供するアーバンドア(Urbandoor)を買収している。

 2016年以降は宿泊に加え、地元のツアー参加、料理クラスやその他アクティビティを提供してきた。

 ホテル業界は、エアビーアンドビーによって変化を余儀なくされてきた。一例を挙げると、マリオットホテルは現在、旅先での体験やホームシェアリングサービスを提供している。

 一方でエアビーアンドビーもまた、アムステルダムやスペイン・バルセロナなどの都市において反発を受けている。エアビーアンドビーによってオーバーツーリズムが助長され、居住空間を失うことで家賃が高騰していることが非難の対象となっている。

 利用者によって家屋に損害を被ったという報告や、差別的なホストの存在も同社にとっては悩みの種である。2018年末、ホストによる宿泊客への差別を防ぐため、予約前の段階で利用者に写真の提出を求めることを取り止めた。

By DEE-ANN DURBIN AP Business Writer
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP