女性向けコワーキングスペースが増加、米国 ヨガや保育など提供も

AP Photo / Jim Mone

 設立から1年のワークスペース、「モダンウェル(Modernwell)」。一歩足を踏み入れると、まるで快適なスパを訪れたような感覚になる。こざっぱりしたオフィスにはフェイクファーで覆われたスツールや、燃え盛る炎を囲む快適なアームチェアなど、居心地の良い空間が広がっている。あちこちに置かれたテーブルには、ノートパソコンを広げる女性たちの姿がある。

 ここに、男性の姿はない。

 今、アメリカ国内では女性専用、もしくは女性を中心としたワークスペースが増えている。ここ、モダンウェルもその1つだ。こうしたスペースの多くは#MeToo運動以前にもあったが、#MeToo運動が職場でのハラスメントを国家的課題として掲げるなか、この業態もそれと連動して成長を遂げてきた。また、「ステレオタイプの企業での職場文化とは異なる、コミュニティや協力的な職場環境を築きたい」という多くの女性の願いをすくいあげているのだ。

                                                                                                                 

 こうしたオフィスにはデスクやコーヒーメーカーが置かれているだけでなく、著名人の講演やヨガレッスン、さらに志を同じくする女性同士の社会的あるいはビジネスネットワークを構築する機会を提供する。世界的な大手ワークスペースの「ウィーワーク(WeWork)」から、ビールとハイテクの要素を差し引いたようなものだ。

 モダンウェルのメンバーであるレネ・パワーズ氏は、「女性たちは、特に、誰にも邪魔されることなくインスピレーションを受け、本当に大切な仕事ができる安全な空間を求めています。そういったことを忘れられる場所が必要なのです。ここなら、文字通りセクハラに遭う心配はありません」と語る。彼女はここでフェミニスト・ブック・クラブという会社を立ち上げた。

 業界最大手といえば、2016年にニューヨークでオープンし、今やアメリカ全土に急速拡大している「ザ・ウィング(The Wing)」だ。昨年10月には、#MeToo運動に賛同する形でサンフランシスコに新たなオフィスを開設している。会議室には、合衆国最高裁の判事候補であるブレット・カバノー氏が高校時代に起こした性的暴行被害を上院司法委員会に訴えた女性、クリスティン・ブラジー・フォード氏にちなんだ名をつけている。カバノー氏は容疑を否認し、判事に任命されている。同社の広報担当者、ザラ・ラヒム氏によると、1ヶ所のオフィスを利用する場合、年会費は2,350ドル(約25万円)で、メンバー登録者数は現在6,000人を超えているという。

 大半のオフィスは男性でも利用可能だが、なかには利用者を女性に限定しているものもある。ワシントンDCでは、ザ・ウィングがある男性から「性差別だ」と訴訟を起こされた。同社の経営陣はすぐさま「申込者の性別は考慮しない」とする会員規定を承認した。これはインサイダー誌によって報じられた。ラヒム氏は、今回の規定について、訴訟が起きる以前から進めており、両者は無関係だと話した。ニューヨーク市人権委員会もザ・ウィングを性差別の疑いで調査している。ザ・ウィングは、委員会に協力していると話している。

「ザ・リベット(The Riveter)」もまた、急成長中のワークスペースだ。現在、シアトルとロサンゼルスに5ヶ所あり、3月にはテキサス州オースティンに新オフィスをオープンする予定だ。先日、同社はあらたにミネアポリスとアトランタなどの都市にも5つのオフィスを開設する計画を発表した。

 創業者兼CEOのエイミー・ネルソン氏は、ベンチャー規模のスタートアップを立ち上げているメンバーは全体の約20%で、利用者の大半は従業員数名の小規模ビジネス、もしくは弁護士や不動産業などの自営業だと話す。月会費は99ドルから数百ドル程度だ。

 ネルソン氏によると、ザ・リベットの会員数2,000名のうち、約4分の1が男性だが、同社の特徴は「私たちは当初から女性を第一に考えている」という点だ。

「今、我々は社会の変革を目の当たりにしていると思います。女性たちの声が届くようになっています」とネルソン氏は言う。

 シェリル・サンドバーグ氏など、著名人の講演会をはじめ、ベンチャーキャピタル企業との事業交流活動やデジタル関連のマインドフルネスやウェルネスのセミナーといったアクティビティを開催している。仕事の未来と個人経営者の台頭について研究するエマージェント・リサーチのスティーブ・キング氏は、ワークスペースがこのようなプログラムを提供することで、他の同業者との差別化を図れるのだと話す。

 モダンウェルの創設者、ジュリー・バートン氏(作家兼ウェルネスインストラクター)は、自身のワークスペースでヨガを教えている。女性たちに回顧録の書き方を教えるクラスもある。モダンウェルはもともと、2015年にバートン氏が作家仲間と共同で立ち上げたものだ。当時のメンバーは、偶然にも女性しかいなかった。2016年のアメリカ大統領選以後、多くの知人女性が動揺する姿を見た彼女は、女性同士が支え合い、自らを力づけるための事業を作らなければ、と触発されたという。

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「反対運動に参加するか否かにかかわらず、私たちにはやるべき任務があると感じました。私は、その任務に参加したいと思ったのです。このワークスペースでは、さまざまな業界や職業的背景を持つ女性たちがつながるチャンスを提供します」とバートン氏は言う。

 こうした結びつきによって女性たちが互いに助け合い、「はたして自分は起業や特定のベンチャーに進出する資格があるのか」と感じる、いわゆるインポスター症候群などの悩みと闘うことができるのだという。

 グローバルワークスペース協会のエグゼクティブディレクター、ジェイミー・ルッソ氏は、「このようなワークスペースのコミュニティ感覚に引き寄せられる女性もいるのだ」と述べている。

 ルッソ氏によると、ワークスペース業界全般が上昇傾向にある今、同分野が成長するにともない、弁護士や不動産業、テクノロジー、ビッグデータや人口知能などの分野で働く人々など、特定の集団を対象にしたニッチなスペースも増えている。運営側にとって、対象を絞ったニッチなスペースのほうが、一般的なワークスペースよりも収益性が高い傾向があるという。

 キング氏の会社が分析したところ、2017年の段階で世界中に1万4,000ものワークスペースがあり、メンバー数は170万人と試算される。今後2022年にはワークスペースが3万、メンバー数は510万人になると予測されている。しかし、女性中心のスペースに関するデータはほとんどなく、成長する同業界でも、女性向けのオフィスは比較的小さいニッチ市場であり続けるだろう、とキング氏は語る。

 保育サービスを提供するワークスペースもあるが、保育に関する州法や地方自治体の法や条例が複雑なため、今のところ稀なケースだとキング氏は言う。しかし、それが変化を見せている。ザ・ウィングではニューヨーク市のオフィスで保育サービスをスタートし、ロサンゼルスでも近々開始予定だ。

 ライフコーチおよびビジネスコーチとして活動するジャスナ・ブルザ氏は、ホームオフィスを持ちながらも、モダンウェルで仕事をしているほうが良いのだと言う。女性たちのコミュニティが彼女を迎えてくれるからだ。ここでは、誰もが彼女の名を知っており、まるで往年のテレビドラマ「チアーズ」に出てくるバーのようだ、と彼女は例える。

「一人でやっていると、本当に孤独になることがあります」とブルザ氏は言う。

「ここは、私にとってハッピーな場所なのです」

By MICHELLE R. SMITH, Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP

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