フォード、貿易戦争で中国からのSUV輸入を断念 それでも米で作らない理由

Andy Wong / AP Photo

◆伝統的車種からほぼ撤退 フォードの生き残り戦略
 そもそも国内製造での利益を出すために、フォードの戦略は変化している。APによれば、ここ数年ガソリン価格は比較的低くなっているため、小型車の需要は減り、SUVやトラックの人気が高いと言う。

 もともとフォードはフォーカス、トーラス、フィエスタなどのセダンを作ってきたが、最近では段階的にそういった車種の製造を止め、より利益の上がるトラックやSUVにシフトしている。すでにフォードの利益の90%は、Fシリーズのトラックから上がっており、セダンを止めたことで、SUVラインアップ充実のための投資が進んでいるということだ(NPR)。

 このような新しいビジョンのもと、普通の乗用車としては、アメリカのシンボルとも言えるスポーツカーのマスタングと、中国製造の「フォーカス・アクティブ」の2種のみが今後米国内で販売される予定だった。関税のおかげで計画通りにはいかなくなったが、フォードは世界各地でセダンやハッチバックなどの生産は続けているため、フォーカス・モデルの車をアメリカで売ろうと思えば、国内製造をせずとも、中国以外の国から輸入することもできると、Dziczek氏は述べている(AP)。

                                                                                                                 

◆もはや迷惑でしかない 旧政権関係者からも批判
 元オバマ政権高官、ジョン・D・ポルカリ氏と元ジョージ・W・ブッシュ政権の高官、エミル・フランケル氏は、デトロイト・フリー・プレス紙に寄稿し、フォードの計画の邪魔をする、トランプ政権を批判する。両氏は、車種のリニューアル、研究開発には莫大な費用がかかり、自動車産業にとっては、明確で信頼できる未来に向けての規制、貿易、エネルギー政策が必要だと指摘する。それなのに、グローバルなサプライチェーンの現実を知らない政権による、無謀な関税や、一貫性のない二国間交渉が、自動車産業に打撃を与えていると断じる。

 両氏はさらに、サウスカロライナ州の工場が世界で最も多くBMWを生産し、全米の自動車会社が、その生産力を収益性の高い商品に傾けている時代に、古い考え方でデザインされた政策を取ることは、バックミラー越しに運転しているようなものだと述べる。そしてまさにトランプ政権の経済成長におけるカオス理論が、自動車業界にとっての「今そこにある危機」だと主張している。

Text by 山川 真智子

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