フォード、貿易戦争で中国からのSUV輸入を断念 それでも米で作らない理由

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 米自動車大手フォード・モーターは、小型SUV「フォーカス・アクティブ」のアメリカでの販売を断念すると、8月末に発表した。当初は中国で生産し輸入する計画だったが、トランプ政権が中国製品に課す関税の対象となり、利益が見込めないと判断したためだ。これを受けてトランプ大統領は、「米国内で生産すれば、フォードは関税を払う必要がない」とツイッター上で勝利宣言を出したが、フォードは国内での生産をきっぱりと否定している。

◆国内生産は割に合わず 費用対効果の問題
 フォードは、「フォーカス・アクティブ」を国内生産しない理由として、「年間セールス予測が5万台以下で、競争の激しい車種であることから考えて、米国内で製造しても利益にならない」ことを上げている。また、国内の時間労働者の雇用数や生産台数では、他の自動車会社を上回っているとし、トランプ大統領が強調するメイドイン・アメリカにはすでに貢献していると主張している(米公共ラジオ網NPR)。

 もし販売台数が5万台に満たない「フォーカス・アクティブ」を国内生産する場合、1日1シフトの稼動になり、コスト効率が低いとCenter for Automotive ResearchのKristin Dziczek氏は指摘する。最低2シフト、理想的には3シフトにしなければ、工場建設や設備導入の投資分をカバーできないという。さらにコンパクト車の場合は、需要があっても薄利であり、人件費などのコストを十分にカバーするだけの利益を出すのは難しい。中国では福利厚生を含めても、自動車製造の人件費は1時間8ドルほどだが、アメリカでは1時間に52ドル以上になるという(AP)。

Text by 山川 真智子