苦境に立つアメリカの新聞業界 オンラインに望み

AP Photo / Mark Lennihan

 アメリカの新聞業界は、不振が続き、崩壊の危機にある。先週、ニューヨーク・デイリーニューズ紙がレイオフ(一時解雇)を決行し、業界にさらなる追い打ちをかけることとなった。地方ニュース紙が苦境に立たされているが、業界関係者の中には、この事態を電子版での復活を果たす機会だとする見方もある。

 シカゴに本社を置く新聞社トロンクは、7月23日、デイリーニューズ紙のニュース編集室職員の半数を解雇。同紙の編集長も解雇した。トロンク社によると、今後は残りの職員で「犯罪、民事事件、社会的責任」に関する速報を軸に活動する。

 ピューリッツァー賞を受賞したこのタブロイド紙は、100年に渡りニューヨークに密着してきた。ニューヨーク市立大学ジャーナリズム大学院でニュース学部長を務めるデイリーニューズ紙の元職員、ジェリィ・へスター氏は、国の最先端を行く都市の番人となってきた新聞社の崩壊を嘆く。

                                                                                                                 

「ニューヨーク周辺や市庁舎を取材する記者を失えば、町の取材力が大きく縮小することは避けられない。外を歩き回って地道な取材を行う記者がいなくなるということは、最終的には記事がなくなるということだ」とへスター氏は言う。

 世界のメディアを牽引する都市が直面している苦境は、他の国においても長年に渡り見られてきた現象の典型的な例だ。ピュー研究所によると、アメリカにおける紙版と電子版を合わせた日刊紙の推定配布部数は、2017年に11%減少し、3,100万部となった。

 少し前の2000年には、平均購読部数は合計で5,580万部あった。ニュース編集者の数はここ3年間だけで15%減少している。

 ポインター研究所でメディアビジネスを分析するリック・エドモンズ氏は、「私たちは確かなプレッシャーを感じている。続々とレイオフが決行されているが、それはつまり報道活動が縮小しているということだ」と言う。「ニュースの空白地帯とされる場所が次々と出始めている」

 新聞社のレイオフに関する懸念は、報道業界だけにとどまらず、今後事実を知る機会が少なくなることを危惧する人々の間にも広まっている。ニューヨーク議会のアンドリュー・M・クオモ氏は、トロンク社は州への報告も、支援要請もなく人員削減に踏み切ったと主張し、同社にこの決断を考え直すよう求めた。

「最終的な収益を計算する際に、利益と配当にしか注目しない大企業が多く存在しているようだ。しかしニューヨーク州は、重要機関の消滅、雇用の損失、そしてその煽りを受けた家族が被る被害も考慮している」とクオモ氏は語る。

 このような風潮は、10年以上前から始まっていた。自動車販売代理店、不動産会社を始めとする企業の事業がオンライン化し、新聞社に広告料を支払わなくなった頃だ。新聞の読者は、次第にインターネットやモバイルアプリを活用するようになり、新聞よりもフェイスブックなどのソーシャルメディアに時間を割くようになった。

 ノースウェスタン大学メディル・ジャーナリズム学院のティム・フランクリン上級副学部長によると、新聞業界の収益はその後3分の1に減少し、その結果として人員削減が行われた。

 ロサンゼルス・タイムズ紙は、かつて1,200人超の記者を抱え、25ヵ所を超える海外支局を展開していた。現在、記者の数は約400人。サクラメント、ワシントンを始めとする国内外に支局を持つが、その数はほんのわずかだ。トロンク社は、今年初めに同紙を医師で富豪実業家のパトリック・スン・シオン氏に売却した。

 デンバー・ポスト紙では、10年以上に渡り職員のレイオフが続いており、現オーナーのデジタル・ファースト・メディア社は4月に30%の人員削減を決行した。一時はデンバー・ポスト紙のライバル紙であったロッキーマウンテン・ニュース紙は、2009年に廃刊となっている。

 さらに近いところでは、今年3月にドナルド・トランプ政権がカナダ製の新聞印刷用紙に関税を課したことも、新聞業界を苦しめている。フロリダ州最大手の新聞紙、タンパベイ・タイムズ紙の取締役会長兼CEOを務めるポール・タッシュ氏は、最近執筆した社説において、関税が恒久的な措置であれば、新聞社が負担する印刷用紙費用が1年あたり350万米ドル上乗せされるだろうと述べている。タッシュ氏はまた、同紙が今年、すでに50人のレイオフを決行したとも書いている。

 解雇となった記者はどこへ向かったのだろうか? 一部の記者は、地方の報道活動を絶やすことなく、活性化しようという取り組みを進めており、自ら電子版新聞を立ち上げている。

 例えばカリフォルニア州バークレーの電子版新聞、『バークレーサイド』は、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙がバークレーから撤退した2009年に創設された。『バークレーサイド』によると、現時点で、今年の1ヵ月あたりの平均ページ閲覧回数は900,000回、ユニーク閲覧者数は270,000人にのぼる。

 バージニア州シャーロッツヴィルでは、教育、土地利用、都市計画に特化した電子版新聞が刊行されている。地方独立デジタルニュース出版社団体(Local Independent Online News Publishers)という組織を運営するマット・ディ・リエンツォ氏によると、シャーロッツヴィルの日刊紙、デイリー・プログレス紙が、電子版新聞の記事を一部使用するという少し珍しい協力体制が敷かれている。

 ディ・リエンツォ氏の話では、同氏の運営する組織は、アメリカ45州とカナダにある225の報道機関を束ねている。
 
 同氏はまた、組織の会員数はここ2年間で倍増したと述べた上で、地方における報道活動については、今後「大規模な地方分権化」が進むだろうと予想する。

「民主主義が機能するためにも、地方企業のためにも、ニュースがいかに重要かを理解してもらえれば、この種の動きが活発になっていく」とディ・リエンツォ氏は言う。「地方の報道活動を潰すような流れにはならない」

 しかしエドモンズ氏は、デジタルニュースの発行を一から始めることは難しいと言う。地方ニュース掲載サイトを運営するパッチは、2014年にAOLに売却された後、従業員数百名をレイオフした。

「広告獲得に向けた競争を勝ち抜くことが難しい」とエドモンズ氏は言う。

 フランクリン氏は、従来型の新聞社に勝機を見出している。それらの企業は、今以上に読者のニーズを満たし、収益性を高める方法を模索中だ。

 ノースウェスタン大学メディル・ジャーナリズム学院は、サンフランシスコ・クロニクル紙、インディアナポリス・スター紙、シカゴ・トリビューン紙と協力して2年間のプロジェクトを立ち上げ、購読者を獲得し、新たなビジネスモデルを構築する方法を見出そうとしている。フランクリン氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙を始めとする新聞社が成功を収めたのに続き、電子版の有料定期購読サービスを開始する新聞社が増えると予想している。

「新聞業界は、このトレンドが確実なものとなった時に、研究開発にもっと真剣に取り組むことができただろうか? きっとできたはずだし、そうしなければならなかった」とフランクリン氏は言う。「今からではもう遅いかというと、私は遅くないと思う。まだ前に進むことができる。実際、地方の報道機関は、読者を第一に、つまりデジタル化を第一に考えたアプローチへと移行し始めている」

By DAMIAN J. TROISE and DEE-ANN DURBIN, AP Business Writers
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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