スポティファイが上場へ 時価総額2.4兆円 NY証取へ直接

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 音楽ストリーミングサービスを展開するスポティファイが、近くIPOを実施すると発表した。すでに大きな成功をおさめているテック系企業のIPOだけに、これを報じる記事には大きな数字が並んでおり、大きな期待が寄せられていることがうかがえる。

◆音楽ストリーミングサービス最大手のIPO
 CNBCによると、スポティファイは2月28日、IPO(Initial Public Offering:新規株公開)を実施する計画があると発表した。同社の株は、ニューヨーク証券取引所で銘柄名「SPOT」で取引開始される予定だ。同社が発表した資料によると、同社株は132.50ドル(約14,000円)で公開され、同社の株価時価総額は230億ドル(約2兆4,500億円)になると見られている。

 発表資料によると、同社の音楽ストリーミングサービスには7,100万人の有料会員がおり、一月あたりのサービス利用者は1億5,900万人に達している。ちなみに同サービスと競合するアップル・ミュージックの有料会員数は3,600万人である。同資料には同社の近年の売上高も掲載されており、2015年には23億7,000万ドル(約2500億円)、2016年には36億ドル(約3,800億円)、そして2017年には49億9,000万ドル(約5,300億円)に達したとのことだ。

◆証券会社を仲介しないIPOの実施
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同社のIPOが慣例とは異なる方法で実施されることを報じている。通常のIPOでは証券会社が仲介に入って公開時の株価を決め、投資家に株を売ることでIPOをバックアップすることになっている。対して同社のIPOは証券会社が仲介に入らず、現在の株主たちが保有している同社株が直接ニューヨーク証券取引所に公開され、株価も同取引所における取引に応じて決まっていくことになっている。

 同紙の記事は、変則的なIPOの手法がとられるものの、スポティファイ株は高い成長率と高額の評価額が期待できる投資家垂涎の株であると報じている。そして、同社株と同等の評価が期待されるIPOを実施していないテック系企業として、スマホアプリを使った自動車配車サービスを展開するウーバーと民泊サービスで知られるAirbnb(エアービーアンドビー)の名を挙げている。

◆大口株主は?
 一方ビジネスインサイダーは、同社株の大口株主を伝えている。記事によると、同社の創業者で35歳のダニエル・エック氏は同社株の25%に相当する4,700万株を所有している。仮にスポティファイ株がひと株あたり22ドル(約2,300円)で売れたとするならば、同氏は10億ドル(約1,070億円)を超える利益を得ることになる。同氏に次ぐ大口株主は、同社共同設立者で45歳のマーティン・ロレンツォン氏であり、13%にあたる2,400万株を所有している。

 ソニー・ミュージックエンタテインメントも大口株主であり、1,000万株以上所有している。もっとも同社は、スポティファイが同社に支払った音楽収入を公平に分配していないとして、ケリー・クラークソンをはじめとした19人のアーティストから訴えを起こされていた。だが、スポティファイのIPOに先立つ今年1月にはその訴えを解決している。そのほかの大口株主には、中国大手インターネット企業のテンセントが1,340万株所有している。

Text by 吉本 幸記