日本人はどの国よりも職場への不満が多く、エンゲージメントが最低

 毎日出社をして人生の多くの時間を過ごす職場環境は、仕事のモチベーションや生産性に関わる大切な要素だ。しかし、どれだけの人が自分の職場環境を気に入っているのだろうか。オフィス家具メーカーの米スチールケース社は、従業員エンゲージメントと職場環境の相関関係について世界20ヶ国(14,903人、従業員数100人以上の企業)のワーカーを対象に調査し、「世界のエンゲージメントと職場環境実態」というレポートを公開した。従業員エンゲージメントとは、従業員が企業の目標達成に向けて、自発的に自らの力を発揮し貢献しようとすること。それによって従業員も成長するという考え方を指している。

 調査の結果、日本は従業員エンゲージメントと職場環境満足度がそれぞれ最低であり、日本人はどの国よりも職場環境に不満があり、会社へのエンゲージメントが低いことがわかったという。ワーカーの居住国やその文化的背景、期待度が、エンゲージメントレベルや職場環境への満足度に大きく影響しているようで、エンゲージメントは新興国ほど高くなり、先進国は低くなりがちだ。

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image via 日本スチールケース株式会社

 職場環境満足度に関わる調査結果を紹介しよう。オープンな執務スペースで仕事をしている割合は、世界平均は23%であったのに対して、日本は78%と非常に高かった。島型対向式レイアウトが日本では一般的であることが影響しているようだ。オフィス外で仕事をする機会が全くない割合は、世界平均は55%に対して、日本は94%と非常に高い。オフィス外で仕事をする機会もなく、就業時間中はずっとオープンな執務スペースで常に同僚からの視線を感じながら働いているという日本の職場環境は、確かに満足度が高くなりにくいように思われる。

 エンゲージメントに関わる調査結果については、「仕事に行くのが楽しい」や「自分の会社を推奨できる」といった項目に肯定的な回答をしている割合は著しく低い。一方、約半数(52%)は「同僚との連帯感を感じる」と答えており、これは世界平均値の76%よりも低いものの日本のエンゲージメント指標の中では最も数値が高い項目だ。また、約3分の1は「職場が楽しく落ち着ける」と答えており、これは世界平均を超えるもので、おそらくは集団における秩序や調和を重視する日本的文化も起因していると分析されている。

 職場環境は経済の成熟度や、国土の広さ、ビジネスの習慣・文化といった様々な要素に影響されるようだが、職場環境を取り巻く日本の労働環境は改善点が多くあるだろう。長時間労働の改善に社会が本腰を入れて取り組みをしているが、労働時間と合わせて労働する環境にも目を向けて、ワーカーが生き生きと職務にあたることができる環境作りが求められるのではなかろうか。この調査は、そうした改善がワーカーの会社へのエンゲージメント向上につながる可能性を示唆しており、これは重要な経営課題でもあるはずだ。

image via flickr | tokyoform

Text by 酒田 宗一