タカタが証拠隠滅か…元従業員証言 エアバッグリコール問題、米で過熱

 日本の大手自動車部品メーカーのタカタ(本社・東京)のエアバッグ品質問題がアメリカで過熱している。エド・マーキー、リチャード・ブルメンソール米上院議員は7日、司法省に対し刑事捜査を開始するよう要請、また国家道路交通安全局(NHTSA)に問題のエアバッグを搭載している車両のリコールを呼び掛けるよう促した。11の自動車メーカーが世界で1400万台をリコール対象とするなど、事態は深刻化している。

◆エアバッグのテスト結果を隠蔽か
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は7日、タカタ元従業員2人(内1人は研究所のシニア職員)の証言を取り上げ、問題について大々的に報じた。証言によると、10年前に米アラバマでエアバッグが破裂し金属片が飛び散った事件を受け、同社は使用済みエアバッグ50個を回収、極秘にテストを行った。

 テストでは、エアバッグを膨らませる鋼の「インフレーター」と言う部品に亀裂が生じ、破裂して金属片や中の薬品が飛び散る可能性があることが確認された。技師たちはリコールに伴う修正を設計し始めていたが、同社は政府の安全規制当局に連絡することなくコンピューターからテスト結果を削除、またインフレーターの廃棄を命じたという。

 元従業員は、問題のテストが2004年、ミシガン州オーバーンヒルズのタカタ米国本部で通常業務時間外や休日に行われた、と証言している。「テストは全て極秘裏に行われた。ある時点で突然、全て片づけて終了させるという明らかに普通ではない手順だった」と話す。タカタ広報担当のアルビー・バーマン氏はテスト開示についてコメントを避けている(NYT)。

 タカタが規制当局に提出した申請書では、リコールのきっかけとなったテストは2008年11月に行われたとされているが、実際には4年前にテスト結果が出ていたということになる。

◆需要急増に伴った品質の低下
 テキサス州流通センターの元品質管理責任者はNYTのインタビューで、特に2000年ゼネラル・モーターズなどの大手顧客の獲得によるエアバッグ需要急増に応えるため、様々な品質問題が生じていたことを明らかにした。内部資料からは、輸送中の事故によってエアバッグが濡れたり破損したりした状態で届けられていたことを従業員が懸念していた様子もうかがえるという。また作業中にフォークリフトから落下したエアバッグについて適切な検査が行われていない場合があったことも証言されている(NYT)。

自動車メーカー側から、スケジュール通りの配達を求められる過酷な環境も悪循環の一因となっていると元従業員は話した。トヨタやホンダなど大手顧客の生産ラインがタカタの出荷遅れでストップした場合、部品販売業者は高額な罰金を科せられることになる。エアバッグの不具合が事故につながる懸念を表明しても、「とりあえず送れ」という状況だという(NYT)。

◆広がる波紋
 2010年にNHTSAが強制行動なしに終了した調査を連邦政府関係機関が再開、また下院委員会は政府責任説明局に独自の調査を依頼した。マンハッタンの連邦検事も事件に関心を示すなど、波紋が広がっている。当局者は、「タカタの問題への関わり方についての懸念が高まっている。早急に文書や回答を求めていく」とコメントした(NYT)。

 タカタ広報担当アルビー・バーマン氏は「我々は政府の調査に協力し、顧客のニーズに応えていく」と発表した。6日には東京でタカタの最高財務責任者が一連の問題について謝罪し、問題による損失は予想を上回るとする見解を発表した。

 ブルームバーグは、タカタ株が約5年半ぶりの安値水準、と報じている。10日午前に一時、前週末比17%安の1170円と2009年以来の安値水準となった。大規模なリコール問題の影響で、タカタ株は年初来で6割程度の下落となった。

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Text by NewSphere 編集部