子供にとって、十分な睡眠時間だけでなく就寝時間も大切
著:Yaqoot Fatima (ジェームズクック大学、Senior Research Fellow)
すべての世代にとって、健やかで元気でいるため、また体の機能を正常に保つために十分な睡眠をとることは不可欠であるが、とくに子供にとってはきわめて大切なことである。睡眠不足により、幼少期の著しい成長や発達が妨げられることもあるのだ。
さらに、これは睡眠時間だけの問題ではない。子供の身体的、情緒的、また認知的な発達において、就寝時間もまた大きな意味をもつ。
早寝を定着させることは、1日の睡眠回数が午睡習慣のある2回から、夜間のみの1回へと移行しつつある幼少期の子供たちにとってとくに重要である。
朝遅くまで寝ることで理想の睡眠時間が得られるとは限らないが、就寝時間が遅いことで睡眠の質が低下したり、寝つきが悪くなったりするという報告もある。
このようなことが積み重なり、子供の集中力や記憶力、行動様式の問題を引き起こすこともあるのだ。
◆早寝は身体的な健康にもよい作用をもたらす
低所得層の未就学児を対象に行った研究では、睡眠が十分でないと肥満のリスクが高まることが示された。この問題に関する学術論文の概略は以下のとおりである。
子供の睡眠不足が一般的になりつつある一方で、幼少期の睡眠時間が短いことと肥満との関連性は一貫して示されている。
この問題に関する研究の多くは、ある時点での調査対象のデータを参照しており、断面的なものであるということを留意しておく必要がある。これでは、不健全な睡眠の習慣によって肥満のリスクが高められていることを総じて主張することは難しい。
より詳細に理解するには、経時的な変化を観察する長期的な研究が必要である。
そのため、就寝時間をどうにかして早めることには意味があるという仮説を実証するには、長期的な研究によるデータが用いられる。以下の概要は、長期にわたって行われたある研究が示した見解である。
平日の就寝時間が早い未就学児が青年期に肥満になる確率は、就寝時間の遅い子供と比較して半分程度であった。就寝時間は修正しやすい習慣であり、肥満を防ぐ効果が期待できる。
2020年に、学術雑誌「アクタ・ペディアトリカ」にて発表した共同研究では、5歳から8歳のアボジリニと、トレス海峡諸島民(オーストラリア・クイーンズランド州)1250人から収集した4年分のデータを分析した。
社会人口学的要因や生活様式を考慮しても、午後9時以降の遅い時間に就寝する習慣のある子供たちは、午後7時頃の早い時間に就寝する子供たちと比較して、3年後の体重が平均して1.5kgから2.5kg重いという結果が示された。
それでもなお、現時点では、就寝時間と肥満リスクの関係性について確かなことは何も明らかにされていない。夜遅くまで起きていると、ジャンクフードやカフェイン飲料の摂取が多くなることが原因とも考えられる。
もしくはより複雑に、生理学的な要因も推測できる。睡眠を司る体内時計は、ホルモンの分泌やグルコース(ブドウ糖)の代謝、エネルギーバランスの調節にとってもきわめて重要な役割を担う。
◆いつからが遅い時間になるのか?
睡眠の習慣には、生物学的要因や文化的背景などのあらゆる要素が影響している。親が子供の就寝時間を決める場合、そこには文化規範や生活様式、そして睡眠の重要性についての知識が反映されている。
年齢ごとに推奨される睡眠時間については明確な指針があるものの、就寝時間については一定の時刻が決められているわけではない。就学前の子供は、十分な睡眠を得るためにも午後7時から8時までに就寝することを推奨したい(もちろん、仕事や介護などでこの時間を順守することが実に難しいという家庭があることは認識している)。
「翌日に学校のない夜」にも、子供たちは早寝を習慣にし、それを維持するよう努めてほしい。体験から理解している親も多いが、就寝時間が一定でないと自然な体のリズムが狂い、問題行動を起こす原因にもなり得る。
幼少期は、生涯にわたる習慣の基礎が作られる非常に重要な時期である。子供に健康な睡眠を習慣づけることで、健やかでより良い将来へと導くことができるのだ。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Mana Ishizuki
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