CO2排出ゼロ、水から水に戻る「水素エネルギー」「人工光合成」は夢ではない

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 二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出「実質ゼロ」の世界的潮流、この「実質ゼロ」は、人為的に排出されるCO2の量と植物が光合成で吸収するCO2の量が等しいという意味だが、相変わらず化石燃料を燃やすことに変わりはない。地球上に人類や生物が生存する限り、呼吸をしてCO2を吐き、大量のごみを焼却する。したがってCO2排出を「完全ゼロ」にすることは不可能だ。

 しかし、少なくともいま、問題になっている化石燃料の燃焼に伴うCO2排出を、「完全ゼロ」にする方策は難しいとはいえ追求すべきだ。前々稿前稿で、筆者はいまできるCO2の削減、CO2の回収・貯蓄・利用について述べてきた。そこで本稿では、CO2を、そもそも排出しない革新的技術を追ってみよう。

◆燃料電池 次世代のエネルギーは水素
 水素が次世代のエネルギーとして脚光を浴びている。水素と酸素を反応させて電気エネルギーを獲得する仕組みが燃料電池だ。このとき、水が生成しCO2はまったく生成しない。水素がクリーンなエネルギーと言われる所以だ。

 水素で走る自家用燃料電池車(トヨタのMIRAIなど)がすでに開発・発売され、都バスでは、現在70台の燃料電池バス(1台1億円)が走っている。しかし、燃料電池車の普及は、まだまだ広がらず、しかも燃料電池の原理はいまから180年前に見つけられているのだが、その開発が遅れたのは、水素を容易に安価に得る方法と、気体であるがゆえに、その運搬と貯蔵方法が困難だったからだ。

 水素をどのように獲得するか大きな問題だが、水素の製造方法はいくつかある。水の電気分解による方法、苛性ソーダ製造の副生水素(NaClの電気分解)、製鉄所コークス炉からの副生水素、化石燃料(石油のナフサ)の水蒸気改質による方法、光触媒による方法(人工光合成、後述)などがある。これらのうち、化石燃料のナフサを使う製造方法が、現時点では大量に安価に水素を製造する方法だ。

 水素の運搬・貯蔵についても開発が進んでいる。高圧ガス、液化水素、パイプライン、有機ハイドライド(有機水素化物)による輸送・貯蔵がある。

Text by 和田眞