空自も採用、次期戦闘機F-35に“明るい兆し” 米海兵隊が実戦配備へ
航空自衛隊が次期主力戦闘機に採用したF-35の米海兵隊用バージョン(F-35B)が、予定通り7月中に実戦配備される見込みが高まってきた。現在、米ノースカロライナ沖にある強襲揚陸艦USSワスプで機体テストを兼ねた離着陸訓練が行われおり、間もなく実戦を想定した運用試験に移る予定だ。技術的な問題が多発し、開発の遅れと大幅な予算オーバーで米国内で大きな批判を浴びてきたF-35計画だが、ようやくゴールの一端が見えてきた。ワシントン・ポスト紙(WP)がワスプからの艦上レポートを掲載しているほか、ロイターなども関連情報を報じている。
◆強襲揚陸艦での試験飛行は順調
F-35はステルス性能や高度な電子戦能力を備えた「第5世代」の次世代戦闘機。米空軍・海軍・海兵隊と、英空海軍、航空自衛隊(2016年度から納入予定)などが導入を決めている。同機には、航空自衛隊や米空軍向けの基本型のF-35A、米海兵隊向けのSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)タイプのF-35B、米海軍向けのF-35Cの3タイプがる。米3軍でそれぞれの型のテスト飛行・訓練を重ねつつ、改良や補給システムの構築など、実戦配備に向けた開発は今も続いている。
米3軍では現在、それぞれ実戦を想定した運用試験に向けた準備段階に入っている。海兵隊が先陣を切って現在離着陸訓練中のワスプで運用試験を行った後、7月中に最初の10機となるF-35Bを実戦配備する予定だ。空軍は来年中、海軍は2018年末から2019年初めにかけての実戦配備開始を目指している(WP)。
F-35は、技術的なトラブルなどで開発の遅れが重なっている。昨年夏にはフロリダ州の空軍基地でエンジンから出火する事故が起き、全機の一時飛行禁止を余儀なくされた。また、当初予定よりも大幅な予算オーバーも米議会やペンタゴン(国防総省)で問題視されている。しかし、WPの艦上レポートによれば、ワスプで行われている艦上離着陸訓練は順調で機体トラブルもなく、ようやく実戦配備に向けて明るい兆しが見えてきたようだ。海兵隊航空副司令官、ジョン・デイビス中将は、この数週間の離着陸訓練を振り返り、「誰に聞いても、大成功だったと言うだろう」と記者団に語った。
◆ソフトウエア面を中心に技術的課題は残る
一方、開発元の米ロッキード・マーティン社は18日、F-35の自動補給情報システム(ALIS)の開発で「比較的小さな」問題が発生したと発表した。ただし、これによって米3軍の配備計画に遅れは出ないとも強調した(ロイター)。
ALISは、作戦・飛行計画や日常点検、部品調達など、F-35の補給全般に関わるデータを自動管理する。米3軍とその他の国の3000機以上の管理の屋台骨となる運用に不可欠なシステムだ、とロイターは記す。当初はレスポンスの悪さなどが問題視されていたが、開発中の最新バージョンは、現在海兵隊のワスプなどで使われている現行型よりも小型軽量で、機体からのデータダウンロードのスピードアップなどの面でも性能アップを図っているという。
米国防総省は、F-35の開発計画は総じて「軌道に戻った」としているが、ALISの他にも機体本体のフライトコンピュータのソフトウエアなどにも問題が残っているようだ。最近では、複数機のF-35間の攻撃目標、敵の位置などの情報共有機能で、「2機ならば問題ないが3機以上になると不正確になる」というトラブルが発生しているが、こうしたソフトウエアの問題がまだ完全に解決していないとWPは記す。
◆空軍でも実戦配備準備は進んでいるが…
米空軍紙『エアフォース・タイムズ』によれば、F-35の実戦配備に向け、人員の移動も進んでいるようだ。空軍は先週、18機のA-10攻撃機を予備に回し、それに伴ってA-10を担当していた少数の整備兵をF-35担当に転属させたと発表した。
空軍は、来年8月までに12機のF-35をユタ州のヒル空軍基地に送り、初めての運用試験に着手する予定だ。空軍のF-35転換担当責任者、ジェフリー・ハリジャン少将は、それに間に合わせるには今回よりもずっと多くの最低1100人の整備兵を転属させる必要があり、議会の承認も待たなければならないと記者団に語った。また、整備兵の習熟訓練も、この夏の終わりまでには初めないと間に合わないという見解を示した。
しかし、空軍はヒル基地に送る予定の機体そのものもまだ受領していないようだ。『エアフォース・タイムズ』によれば、12機のうちの「テールナンバー77」の1番機すらも、まだテキサス州フォートワースのロッキード・マーティン社の工場にあるという。