「経済的威圧」にどう対処すべきか 日本企業に求められること

Koji Sasahara / AP Photo

 このところ、日本企業の間では中国への依存度を下げる動きが活発化している。一部メディアは9月末、三菱自動車が中国での自動車生産から撤退すると報じた。中国では電気自動車(EV)の普及が急速に進み、中国メーカーが存在感を高めるなど、日本の大手自動車メーカーは国際競争で厳しい立場にある。三菱自動車は現地合弁会社の「広汽三菱汽車」を通してガソリン車を中心に生産してきたが、販売不振で3月から生産を停止している。今後は東南アジアシフトが鮮明になるという。

◆日本企業にとって中国市場はさらに難しくなる
 これは三菱自動車に限った話ではない。この決定は国際競争力で厳しい立場に追いやられたという経営事情によるものだったかもしれないが、地政学的リスク、経済安全保障の視点から、今後日本企業の脱中国依存はいっそう広がることだろう。

 日本は今年7月下旬、先端半導体の製造装置など23品目について中国への輸出規制を開始した。中国は先端半導体を是が非でも獲得する必要があり、この輸出規制を日本による経済的威圧と考えている。ガリウム・ゲルマニウムの輸出規制、日本産水産物の全面輸入停止などは中国による日本への対抗措置であり、今後日中の間では貿易摩擦が激化する恐れがある。

 また、中国は7月よりスパイ行為の定義を大幅に拡大した改正反スパイ法を施行した。これまでのところ、改正反スパイ法に抵触したとして逮捕された日本人は報告されていないが、今後在中邦人の安全が懸念される。

 こういった地政学的な懸念事項を考慮すれば、日本企業にとって中国ビジネスはますます難しくなっており、長年中国に依存してきた日本企業を中心に変化が求められている。

Text by 本田英寿