アメリカの対中半導体規制は経済安全保障か、保護主義化か?

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◆焦るアメリカ 規制は本当に経済安全保障の枠内か
 トランプ政権でもバイデン政権でも、国家としてのアメリカは台頭する中国への警戒感や焦りを強めている。第2次世界大戦後の世界秩序はアメリカ主導で構築されてきたものであり、冷戦後の世界はその典型だ。しかし、今日その世界秩序に挑戦し、アメリカを力で抜き去るかもしれない中国という存在が台頭してきたことで、アメリカの焦りは強まるばかりだ。

 アメリカのなかには、いかにして自らのポジションを守るか、いかにして中国の台頭を抑えるかという意識が強まっている。アメリカは安全保障上の理由から半導体分野で対中規制を強化しているが、それが本当に経済安全保障の枠内に収まっているか、筆者は日に日に疑問を感じている。こういった警戒感や焦りから、アメリカが経済安全保障という便利な口実を過剰に利用するのならば、保護主義的な動きが加速するリスクも考えられる。アメリカの大手半導体企業の幹部らが懸念する背景にはそれがあるのだろう。

Text by 本田英寿