「経済的威圧」で相手国の行動を変えようとする中国 日本は備えを

Andy Wong / AP Photo

◆中国によるオーストラリア、リトアニアへの経済的威圧
 また、中国は同じような理由でオーストラリアへも経済的威圧をかけた。新型コロナウイルスの真相究明や新疆ウイグル自治区での人権問題などについてオーストラリアが中国を非難し、中豪関係が悪化するなか、中国はオーストリア産の牛肉やワインなどの特産品の輸入を突然停止することを発表した。これも習政権が内政事項だと強調する問題に対して、オーストラリアが首を深く突っ込んだことへの制裁とみられ、中国側にはオーストラリアに態度を改めさせようという狙いがあったはずだ。

 さらに、バルト三国の1つ、リトアニアは近年、首都に事実上台湾の大使館となる施設を開設するなど台湾と政治的、経済的に関係を深めているが、それに反発する中国は同国産品の輸入を禁止するなど、気に食わないと判断した中小国に対して経済的威圧で圧力を加えている。

◆日本への経済的威圧はどうか
 一方、日中関係の悪化も懸念される現在、今後は日本にも経済的威圧が仕掛けられることが心配される。日中間でも過去に関係が冷え込んだ際、中国産レアアースの対日輸出が突如停止されるなど、日本にも経済的威圧が仕掛けられたことがある。今後の日中関係の行方をめぐり、中国に進出する日本企業としては、この経済的威圧によるビジネスへの影響を考えておく必要もあるだろう。中国にパイナップルを輸出できなくなった台湾はその後日本向け輸出を強化して大きな損害を免れたように、日本としても経済的威圧に対処するため、中国依存を軽減し、同盟国や友好国との間で経済関係の強化・多角化を図っておく必要があるだろう。

Text by 本田英寿