「経済的威圧」で相手国の行動を変えようとする中国 日本は備えを

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 経済安全保障の重要性が世界で広がるなか、欧米や日本などの間では経済的威圧への懸念が強まっている。経済的威圧とは簡単に言うと、経済相互依存関係にある2つの国家があった場合、一方の国が気に入らない行動を取ろうとしたときに、もう一方の国が経済力を武器に相手国に圧力を加えて、行動を思いとどまらせることだ。実際問題としては中国を念頭に置いた懸念だが、近年中国は中国と経済で深く結びつく国々に対して、外交関係が冷え込んだときに経済的手段で圧力をかけており、欧米などは対中依存を軽減することで、中国による経済的威圧に対処しようとしている。

◆中国による台湾への経済的威圧
 では、実際中国は近年どのような経済的威圧という手段を取っているのだろうか。まず、関係が冷え込む台湾だ。有事の可能性をめぐって緊張が続くなか、中国の習政権は、台湾の蔡英文政権が欧米との結束を強化することに対して不満や苛立ちを強めており、その軌道修正を図る目的で、中台貿易において一方的な規制を仕掛けた。

 たとえば、中国は台湾産のパイナップルや柑橘類、高級魚ハタなどの輸入を突然停止した。中国側はこれについて衛生上の理由だとしているが、台湾は深く中国経済に依存しており、輸入の一方的停止は台湾に不満を強めた中国による経済的威圧との見方が強い。習政権としては、貿易面で台湾に経済的損失を与え、それによって蔡英文政権の欧米重視路線を軌道修正させる狙いがあったと考えられる。今後も同じようなことが発生する可能性は十分にある。

Text by 本田英寿