多元化・長期化する米中対立

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 そして、人権の領域へも拡大している。バイデン政権は新疆ウイグル自治区で続く人権侵害や強制労働などについて中国に対する圧力を強化し、強制労働と関連がある製品の輸入を禁止する「ウイグル強制労働防止法」を2022年6月に施行。中国が進める一帯一路をけん制する目的で同盟国や友好国と途上国支援を強化するなど、米中対立は軍事や安全保障だけでなく、経済や貿易、技術、人権、援助、サイバー、宇宙など多領域で展開されている。これが米ソ冷戦とは大きく異なるところだ。

◆関係改善や発展ではなく、いかに危機を抑えるか
 先月、高まる緊張を懸念してかアメリカのブリンケン国務長官が訪中し、習政権幹部らと会談した。しかし、これは米中関係を友好ムードに持っていこうとするものではなく、高まる緊張をいかに抑えるかというものである。米中双方とも軍事衝突は最大限回避しようとするだろうし、そのための会談も今後繰り返し行うだろう。しかし、それは高まる危機をいかに抑えるかというものであり、米中間の対立が数十年単位で続くということを我々は十分に認識する必要がある。

Text by 本田英寿