G7広島サミットで露呈した一致団結の難しさ

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◆一致団結の難しさを露呈したG7サミット
 一方、予想されていたことではあったが、今回のG7サミットは一致団結の難しさを露呈した。ブラジルのルラ大統領はサミット後、ウクライナ支援を続けるアメリカを批判し、軍事支援は平和の実現にとって意味がなく、ウクライナ問題はロシアと敵対するG7の枠組みではなく国連で議論すべきだと強調した。

 ロシアと伝統的友好関係にあるインドも、欧米主導の制裁には参加せず、エネルギー関係でロシアと協力を強化するなど、グローバルサウスの声はG7と一致しない。

 また、そのG7のなかでも対中国では温度差を露呈した。たとえば、フランスのフィガロ紙はサミットを総括し、G7広島サミットがロシア制裁を強化し、中国を叱責する会議になったと伝えた。同紙によると、マクロン大統領は首脳声明で、対中関係でリスクを減らすことはできても、経済でデカップリングはできないので、中国への懸念を抑えた表現にするよう求めたという。こういったブラジルやフランスの声は日本と一致するわけではない。

 今回のサミットはゼレンスキー大統領の訪問で極めて象徴的なものになった一方、国際政治の複雑さも露呈するものになった。

Text by 本田英寿