イラン・サウジ外交関係正常化を仲介した中国の意図
◆中国の狙い
最大のポイントはこの関係改善を仲介したのが中国ということだ。今日、中東でアメリカのプレゼンスが低下する一方、中国は一帯一路政策によって中東での影響力を拡大してきた。中国には中東での石油利権を確保したいという狙いがある。中国とイランは良好な関係を維持しつつ、アメリカとサウジの関係はバイデン政権になってから急速に冷え込んでいった。それが、サウジの中国接近に拍車をかける形となった。
そして、中国には一つの思惑が見え隠れする。近年、台湾問題をめぐって米中の対立が深まっているが、中国は武力で台湾を制圧する選択肢を捨てていない。武力行使となればかなりのコストが生じることは間違いないが、習政権が侵攻の際に重視することの一つに国際評判がある。要は、侵攻した際、どれくらいの国が沈黙するか、非難しないか、中国に制裁しないかということだが、ウクライナ侵攻でも実際にロシアを積極的に非難、制裁したのは欧米や日本など30から40ヶ国にとどまっている。台湾統一を必ず成し遂げると断言している習政権としては、侵攻までの期間、中国の国際評判を高めることで侵攻しやすい政治環境を作り出したいはずだ。そういう意味では、今回の中東の大国サウジアラビアとイランの国交正常化を手伝い、国際評判を高めたことには大きな意義があるのかもしれない。
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