代理戦争化するウクライナ戦争 中国の接近・関与も顕著に

ベラルーシのルカシェンコ大統領(左)と中国の習国家主席(3月1日)|Huang Jingwen / Xinhua via AP

◆ウクライナ情勢への中国の関与
 そして、代理戦争化に絡むアクターは米ロだけではない。ここに来て中国の関与も色濃くなってきた。バイデン政権のサリバン大統領補佐官は2月26日、中国によるロシアへの武器供与について言及し、中国は依然として武器供与を検討対象から外しておらず、仮に供与すれば大きな過ちであると警戒感を示した。また、ブリンケン国務長官も同月18日、中国はこれまでロシアに殺傷力のない装備を送ってきたが、殺傷兵器の提供を検討しているとの情報があると明らかにした。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長も同月24日、中国がロシアに武器支援を検討している兆候を確認したとして、中国に自制を呼びかけた。

 一方、中国外務省は2月24日、主権と領土の一体性の尊重や停戦の実現、和平交渉の開始、また核兵器使用や原子力発電所への攻撃に反対する立場などを盛り込んだ12項目からなる和平案を発表した。これについて、和平案には大前提としてのロシア軍の撤退が明記されておらず、結果としてロシアによる侵攻を正当化することになるなど欧米から批判の声が上がっている。また、習国家主席は3月1日、北京を訪問したベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、欧米によるロシア制裁に反対する立場を示し、政治や経済など多分野で協力を促進していくことで一致した。ルカシェンコ大統領はリトルプーチンとも呼ばれ、実質ロシアの弟的存在になっている。ルカシェンコ大統領の訪問の背後にプーチン大統領の意向があるかはわからないが、双方にはウクライナ情勢への中国の関与を望む思惑があることは間違いないだろう。このように、最近のウクライナ情勢は米ロだけでなく、中国の接近・関与も顕著に見られるようになっている。

Text by 本田英寿