分断へ「戻る」世界 ウクライナ侵攻から1年、今の世界を考える

プーチン大統領(左)とバイデン大統領(2021年6月16日)|Patrick Semansky / AP Photo

 さらに、中国やインド、パキスタンなど多くの非欧米諸国は、制裁によって安価となったロシア産エネルギーへのアクセスを強化している。こういった国々は価値観や理念以上にどうやって国益を守り発展するかという実利を重視しており、ロシアを擁護する意思を示さなくても、世界の分断を我々に強く示している。

 ウクライナ侵攻は国際法の基本原則を打ち破るロシアを印象づける一方、各国がそれぞれ自らの重要性や利益を第一にして動くという国際政治の現実を如実に示す形となった。

◆世界は分断が基本?
 一方、筆者はむしろこれこそが自然だとも思っている。我々は日本史や世界史を小中高校で学ぶが、その多くのページは争いでカバーされ、人間、国家は実際争い、戦争を繰り返してきた。その連鎖の後に誕生したのが今日の国際秩序である。むしろ、冷戦が終わり、対テロ戦争の時代あたりまでの1990年から2010年あたりまでが例外で、今日のような力による現状変更が存在する時代が普通とも言えよう。世界が分断に向かうとよく言われるが、それは1990年から2010年あたりの国際秩序と比べてのことであり、ロシアによるウクライナ侵攻や中国による海洋覇権など、力を重視する国際秩序は歴史の大半を占めている。そういう意味では、世界が分断に向けて進んでいるという表現は正しくないのかもしれない。

Text by 本田英寿