台湾有事の本質はどこにあるのか 習近平氏がリスクを冒して動くとき
今年、台湾有事をめぐって国際的な緊張が高まり、日本国内でも台湾有事を想定した動きが拡大した。永田町では有志議員らが集まって邦人の保護・退避に関する会合を活発的に開催し、日本企業の間でも台湾在住の駐在員の保護・避難、台湾依存のサプライチェーンの改変などを本格的に検討する動きが見られるようになった。そして、台湾有事が発生する可能性について、軍事安全保障分野の専門家を中心に強く警戒すべきとの意見がある一方、「経済の相互依存が進んだ今日では戦争は起きにくい」「台湾へ侵攻すれば中国経済は大打撃を受けることになるので、さすがに習国家主席は侵攻の決断を下さない」といった意見は多方面で聞かれる。
◆台湾有事をめぐる本質
台湾をめぐる情勢について、筆者はさまざまな意見が上がっていいと思うし、それらは最大限尊重されるべきだと考える。しかし、一つ忘れてはならないのは、台湾有事をめぐる問題の本質とは、「中国の習国家主席が経済より政治的目標を優先する場合があるかどうか」である。
これについて、平和が当たり前の日本の世論では「経済の相互依存によって戦争のリスクは低下している」「経済を壊してでも中国が台湾に侵攻することはない」という風潮が無意識のうちに社会全体に漂っている感がある。確かに、自由で公正な選挙によって国家指導者や国民の代表が選ばれる欧米や日本などの民主主義国家においては、国民や議会の意見は強く、国家指導者や政権はその声を反映する必要性に迫られるなど、少なからず影響を受ける。しかし、ここで重要なのは、権威主義国家の方向性を、自由や人権、法の支配といった我々日本人が日常生活で当たり前に享受している価値観で考えてはいけないということである。
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