クロアチアが23年からシェンゲン圏に ブルガリアとルーマニアはなぜ見送り?

クロアチア・ブレガナの国境検問所(12月8日)|AP Photo

◆ブルガリアとルーマニア先送りの理由
 シェンゲン圏への加盟には、「共通規則の適用、対外国境の適切な管理、安全に関する情報の共有、警察間の相互協力」などの条件を満たすことが求められる(ユーロニュース)。また最終的な決断には、EU加盟27ヶ国の閣僚が集まる理事会による満場一致の承認が必要だ。

 ブルガリアとルーマニアのシェンゲン協定加盟は、2011年にも否決されている。その時は、フランス、ドイツ、フィンランド、スウェーデン、オランダ、ベルギーが両国の「汚職や組織犯罪、司法改革」などに懸念を持ち反対した。だが、11年後にあたる今回のEU理事会を前に、フランスのダルマナン内相もドイツのフェーザー内相も、クロアチア、ブルガリア、ルーマニアの3ヶ国は「国境管理のために多大な努力を支払ってきた」と賛成の意を表明していた(20minutes紙、12/8)。

 今回ルーマニアとブルガリアの加盟に反対したのは、オーストリアとオランダだ。以前から両国における賄賂の横行や組織犯罪を問題視していたオランダでは、一部の議員がルッテ政権に拒否権行使を要請するなどの動きがあった(EURACTIV、10/21)。オランダ議会内でも意見が分かれていたが、最終的にブルガリアの加盟を拒否した。

 オーストリアのカルナー内相も「ルーマニアとブルガリアにシェンゲン協定を拡大させることに反対票を投じる」と表明した。オーストリアは近年、亡命申請の急激な増加に直面しており、国境コントロールが取り払われることで、移民がさらに増加することを怖れたと見られる。(ユーロニュース、12/8)

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Text by 冠ゆき