「新冷戦に巻き込むな」危機感強めるグローバルサウス 分断進む国際社会

国連総会の緊急特別会合(12日)|Bebeto Matthews / AP Photo

 今年もあと2ヶ月で終わろうとしているが、筆者は世界の分断がいっそう進んでいるように思う。大国間の対立は一段と深まり、それはすでに不可逆的なものになっている。気候変動や移民・難民、経済格差や人口爆発などグローバルな課題への取り組みがさらに重要になっているが、今日、大国は自らの国益を重視し、グローバルな課題への優先順位は低い。一方、大国間対立が激しくなるにつれ、経済成長を重視する途上国はそれに対して強く不快感を示し、独自の路線を進もうとしている。今日の世界においてグローバルなリーダシップを発揮できる国は存在せず、世界の分断はますます進んでいる。

◆台湾をめぐる緊張激化、ロシアによるウクライナ侵攻
 米中対立は安全保障や経済、技術革新や人権などさまざまな分野で激しくなり、今年は8月のペロシ米下院議長の台湾訪問がきっかけとなり、さらに激しさを増している。10月に開催された共産党大会で習国家主席は改めて台湾統一において武力行使をいとわないと発言し、緊張は高まる一方で有事の発生もこれまでになく現実味を帯びてきている。そして、米中対立の激化に加え、今年2月下旬にロシアがウクライナに軍事侵攻したことで、欧米とロシアの対立が深まることになり、対米でロシアとの共闘関係を重視してきた中国までもがロシアと距離を置く姿勢を示している。

 またインドはこれまでクアッドを構成する日本や米国、オーストラリアなど欧米陣営との関係を維持する一方、ロシアとの伝統的友好関係も維持してきたが、ウクライナ侵攻が長期化するなか、インドのモディ首相も「今は戦争をする時代ではない」としてプーチン大統領に苦言を呈し、インドもロシア離れの様相を示している。

Text by 本田英寿