「暗くなる」欧州の街、厚着の推奨も…エネルギー危機で進む節電施策
◆各国の状況と対策
エネルギー不足の状況に対して、EUは8月から2023年3月までのガス消費を15%削減することで同意し、各国では対策が進んでいる。例えばドイツでは家庭の暖房や工業において天然ガスが使用されており、ガスはエネルギー全体の4分の1を占める。戦争前はその55%がロシアから供給されていたが現在は1割以下となっている。閉鎖が予定されていた石炭火力発電所の再稼働を余儀なくされた状況だ。イタリアも同様の状況で、電気代の高騰が予測されている。
フランスにおいても節電対策が進んでいる。フランスは通常は電力輸出国だが、今回のガス供給の停止に加えて、原子力発電所の技術的トラブルにより電力供給量が大幅に制限されている。2021年は原子力が発電割合の69%を占めていたが、現在は原子炉の冷却システムの腐食の問題とメンテナンスのために、56基ある原子炉の半分以上が停止している状況。マクロン大統領は「エネルギー節制(sobriété énergétique」を掲げ、企業や家庭に対して電力消費を2年間で10%まで減らすとの方針を示した。パリではエッフェル塔のライトアップの時間が短縮されたほか、アイコニックな観光名所の夜の照明も消された。街頭の明かりも暗めの設定になっている。暖かい格好をして暖房の設定温度を下げるようにといったような呼びかけもある。それぞれの対策の効果は具体的には数値化されていないが、世界一の観光地の最もアイコニックな場所の明かりを消すことや「ウォームビズ」の推進は、エネルギー節制の方針を、わかりやすく見せるといったイメージ・キャンペーンやジェスチャーとも捉えられる。
戦争と国際関係の緊張の高まりがエネルギー節約の引き金になるというのは皮肉なことだが、エネルギー危機を見据えた対策が、今後の中長期的なエネルギー政策の見直しや継続した節電の取り組みつながることが期待される。
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