「住民投票」4州から脱出するウクライナ人 留まれば動員対象に
◆いくつもの検問をくぐり抜けて
ロシア人として戦うことはできないという思いから、厳しい管理下に置かれるこれらの4州を苦労して脱出するウクライナ人は後を絶たない。
住民投票前にメリトポリからザポリージャ市(ザポリージャ州の大半はロシア軍支配下にあるが、同市はウクライナ軍制御下)へ脱出した43歳の男性は、ロシアの支配下にある故郷の生活を「首のまわりに巻かれた縄を少しずつ絞められているようなもの」と形容する。37歳の男性も「住民投票が終われば、おそらくウクライナ(の制御下にある土地)には入れなくなる」と考えての脱出だったと説明する。実際、ザポリージャ市で脱出者支援を行っているボランティアによれば、脱出者の数は減少傾向にある。若い脱出者はとくに多く検問所で留め置かれるからだ。(フランス・アンフォ、9/23)
◆故郷や家族と引き裂かれても
結果的には脱出に成功した40代男性も、3つの検問所で入念な取り調べを受け、恐ろしい思いをしたと語る。一家で脱出を試みた人のなかには、夫が検閲所で留め置かれたため、母子のみで脱出したケースもある。そのうちの一人のイリナは、「ほかに方法がなかった」状況を説明し、「モスクワからバルト諸国、ポーランドを経てウクライナに入った夫とウクライナで再会する」希望を持っていると話す。(フランス・アンフォ、9/28)
脱出できたことに安心しながらも、大半の人の見通しは悲観的だ。今後恐らく故郷に戻ることはできず、残った家族との再会も難しいと考えているからだ。今回ザポリージャ州のエネルホダルから脱出してきた男性は、クリミア地方に家族がいるが、2014年のロシアによる併合からこの方、家族に会いに行くことは叶わないままだと嘆く(同上)。今回もまた、一度脱出すれば、もう二度と戻ってこられないかもしれない。そういう決意を胸に脱出を図っている。
【関連記事】
動員令で脱出するロシア人は政治難民なのか? 受け入れめぐりEU内で賛否
国外脱出、抗議デモ、徴兵事務所への攻撃……動員令で混乱するロシア
ロシア軍の少数民族差別 スラブ系より高い死傷率、残虐行為のスケープゴート
- 1
- 2