コモンウェルス会議、ルワンダ開催の「矛盾」

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◆ルワンダ開催の「矛盾」とは
 開会セレモニーで演説したカガメ大統領は、英国と歴史的なつながりのない新しい加盟国であるルワンダがCHOGMを開催するという事実は、変化する世の中においてコモンウェルスを再考し続けるという加盟国の選択を表すものだと述べた。演説は469ワード、6分弱と短いものではあったが、大統領は小さな島国や開発途上国の存続危機をもたらす気候変動、若者の雇用創出などといったキーワードを述べた。さらに、ガバナンス、法の支配、権利の保護といった価値が、コモンウェルスが共有する価値で、アイデンティティであるとした。また、25日に出された会議の共同声明(communiqué)でも、数多くの議題の中で「ガバナンス・人権・法の支配」が序文直後の最初の議題として扱われている。共同声明の文中では、民主主義の価値、表現の自由といった具体的なキーワードも含まれている。

 カガメ大統領の独裁的・弾圧的な政治のアプローチは、しばしば批判されてきた。コモンウェルスの価値観と、ルワンダ・カガメ政権の実態には矛盾があり、このコモンウェルス会議に対しては、批判の声も少なくない。ガーディアンのオピニオン記事では、ミケラ・ロング(Michela Wrong)がCHOGMのルワンダ開催は、見せかけでしかないと一蹴。メディアの言論の自由は封じられ、ジャーナリスト、人権活動家や反対勢力は投獄、殺害されている。また、ニューヨーク・タイムズでも、人権擁護という価値観の推進と、開催国ルワンダに対するコモンウェルス首脳陣の態度の矛盾を指摘している。ルワンダの野党党首のビクトワール・インガビレ(Victoire Ingabire)は、2010年にオランダから帰国し、選挙に出馬しようとしたが逮捕され、15年の刑が言い渡された。カガメ政権の弾圧的な統治は知られているものの、カガメ大統領は「西」世界のリーダーと「良好な」外交関係を築いているようだ。CHOGMは、ルワンダのカガメ政権のソフトパワーを強化するイベントに過ぎず、本質的な課題解決や成果は限定的なものでしかないようだ。

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Text by MAKI NAKATA