暗殺されたコンゴ初代首相の歯、ベルギーから返還 60年経て残る植民地支配の傷跡
◆明かされた真実と和解への一歩
ルムンバの死について、当時、真相は明かされず、殺害の詳細が明らかになったのは何十年も後のことだ。彼の殺害にはCIAが関与していたというような糾弾も存在するとアルジャジーラは報じる。(国連軍の支援を得られなかったルムンバは、旧ソ連に支援を要請していた。)一方、ルムンバはコンゴの独立を象徴する英雄として位置づけられている。昨年は彼の死の60周年を記念し、現職のフェリックス・チセケディ(Felix Tshisekedi)大統領が敬意を表明した。そして6月30日の独立記念日を目前に控えた今年の6月20日、ベルギーが所有していたルムンバの歯の一部が、ブリュッセルにて遺族に引き渡された。
今回返還されたのは金で覆われた歯で、ルムンバの殺害を指示したベルギー警察本部長のジェラール・ソエテ(Gerard Soete)の家族が保有していたものだ。ソエテは1999年に製作されたドキュメンタリーにて、歯と指の一部を「ハンティング・トロフィー」、つまり狩猟の戦利品として取っておいたとコメントしている。コンゴを支配していたベルギー人にとって、ルムンバは人間以下としてみなされていたことを示唆している(BBC)。
ベルギーにて遺族に引き渡された歯は、翌日、棺に入れられて祖国コンゴへ旅立った。歯は、一般公開を経て埋葬される予定だ。また6月27日より3日間は、ベルギー占領時代、そして35歳で殺害されたコンゴ初の首相に敬意を表し、半旗が掲げられ、全国的に喪に服すということが発表された(クオーツ)。歯が返還された式典において、ベルギーのアレクサンダー・デ・クロー(Alexander De Croo)首相は、ルムンバの殺害に対して正式に謝罪した。
いまだに続く植民地支配の傷跡。残念ながら、今回の歯の返還は稀なケースではなく、その傷跡を象徴するような出来事の一つに過ぎない。
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